今回は、「エネルギー」についての説明です。
1.エネルギーの基本
生物は食事をします。
何故食事をするのかというと、生命維持・身体活動にはエネルギーが必要だからです。
摂取したエネルギーは身体から熱という形で放出されるので熱量と呼ばれたり、単位が[kcal]であることからカロリーと呼んだりします。
ちなみに、1[L]の水の温度を1[℃]上げるのに必要なエネルギーが1[kcal]です。
知ってても使い道ないですけどね。
国際的にはエネルギーの単位は[J]ですが、日本では[kcal]が一般的ですね。
1[kcal]=4.184[kJ]と定められています。
エネルギーは、炭水化物・たんぱく質・脂質の三大栄養素からおおよその値が算出可能です。
各成分は1g当たりの利用エネルギー量(エネルギー換算係数と言い、1[g]当たり何[kcal]に相当するかを定めてある)が決まっていて、以下のように表せます。
エネルギー[kcal]≒炭水化物[g]×4+たんぱく質[g]×4+脂質[g]×9
何らかの食品の栄養成分表示を見て計算してみると面白いですよ?
米や大豆など、食品によって誤差があるので、この計算では完全に一致はしませんけどね。
2.太る理由と対処法
例えば、2000[kcal]のエネルギーを摂取して、生命維持・身体活動に1600[kcal]必要だったとします。
では、400[kcal]の余剰エネルギーはどうなるのでしょうか?
脂肪になってお前らの腹の周りに付くんだよ!
ということで、エネルギーの摂取量と消費量のバランスを考えましょう。
エネルギーの摂取量は誰でも同じですが、エネルギーの消費量には個人差があります。
エネルギーの消費量は、基礎代謝(生命活動を維持する為の必要最低限のエネルギー)・身体活動(運動)・DIT(咀嚼時の消費エネルギー)などによって上下します。
俗に言う太りやすい体質の人は基礎代謝が悪い人のことですね。
ただ普通に生きているだけで1日当たりの消費エネルギー量に差が出ているのですから当然です。
太っているということは、エネルギー摂取量≫エネルギー消費量ということなので、痩せたいなら「エネルギー摂取量を減らす」、「基礎代謝を上げる」、「運動をする」など努力が必要です。
逆に言えば、それだけで痩せます。
努力しているけど痩せないと言う人は大抵努力不足です。
消費カロリーの早見表なんてものがあったので試しに見てみると、100[kcal]消費するだけでもいかに大変かがわかるので、日頃から食事中は噛む回数を増やし、ゆっくり噛んで食べることで満腹中枢を刺激してあげるなど、小さなことでもコツコツと積み重ねていくことが大事だと実感できます。
ちなみに、エネルギー摂取量を減らす場合、基礎代謝を下回るレベルで制限してしまうと体調を崩す要因となるので、極端な制限は止めましょうね。
3.エネルギーとBMIの関係
エネルギー摂取量≫エネルギー消費量の食生活をしていれば体重は増え、エネルギー摂取量≪エネルギー消費量の食生活をしていれば体重は減ります。
ですが、実際に体重が前後するのは食生活が変化した初めのうちで、長期的にその食生活を続けるとある一定の体重から変化がなくなります。
この現象は、エネルギー摂取量とエネルギー消費量に則って体重が増減し、体重が増減することでエネルギー摂取量とエネルギー消費量もまた変化するという関係を繰り返すことで最終的にエネルギー摂取量とエネルギー消費量が均衡することで起こります。
つまり、痩せていても太っていてもエネルギー摂取量=エネルギー消費量という関係は成り立ってしまう為、健康という観点ではエネルギー摂取量とエネルギー消費量だけにフォーカスするのは不十分と言えます。
ここで出てくるのがBMIという考え方です。
BMI (Body Mass Index / ボディ・マス指数、体格指数)は、体重[kg]÷身長[m]の2乗で算出される値で、国際的に用いられている肥満度の判定方法です。
より健康体であろうとした場合、BMIから自分の現在の食生活でのエネルギーの過不足を判定することが可能です。
計算方法自体は世界共通ですが肥満の判定基準は国によって異なるので、日本の場合についてのみ考えていきます。
例えば、私は身長168cm、体重55kgなので、55÷1.682≒19.5でBMIは19.5となります。
一般的にはBMIが22で標準体重とされており、最も病気になりにくい状態であるとされています。
18.5未満がやせている、18.5以上25未満が普通、25以上が肥満という扱いになります。
なので、私は標準扱いになるわけですね。
ただ、内臓脂肪に関してはBMIでは何とも言えないですし、脂肪より筋肉の方が比重が大きいので、BMIがまともだからといって油断はしないようにしましょう。
あくまで目安です。
4.1日当たりのエネルギー必要量
では、実際に1日当たり何[kcal]程度必要なのかについて考えていきます。
エネルギー必要量を現状最も正確に測定する方法として二重標識水法というものがあります。
二重標識水法は高価なので、取って代わる測定方法を日々お偉い方々が模索してくれていますが、中々取って代われる方法は見つからないようです。
算出方法よりも結論だけ知りたい方が多いと思いますので、まずは簡潔に述べます。
以下の表で年齢・性別・身体活動レベルを照らし合わせて自分の条件に合致する箇所を参照して下さい。
その数値が1日当たりの必要エネルギー量[kcal]です。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
身体活動 レベル |
Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ |
0~5ヶ月 | - | 550 | - | - | 500 | - |
6~8ヶ月 | - | 650 | - | - | 600 | - |
9~11ヶ月 | - | 700 | - | - | 650 | - |
1~2歳 | - | 950 | - | - | 900 | - |
3~5歳 | - | 1300 | - | - | 1250 | - |
6~7歳 | 1350 | 1550 | 1750 | 1250 | 1450 | 1650 |
8~9歳 | 1600 | 1850 | 2100 | 1500 | 1700 | 1900 |
10~11歳 | 1950 | 2250 | 2500 | 1850 | 2100 | 2350 |
12~14歳 | 2300 | 2600 | 2900 | 2150 | 2400 | 2700 |
15~17歳 | 2500 | 2800 | 3150 | 2050 | 2300 | 2550 |
18~29歳 | 2300 | 2650 | 3050 | 1700 | 2000 | 2300 |
30~49歳 | 2300 | 2700 | 3050 | 1750 | 2050 | 2350 |
50~64歳 | 2200 | 2600 | 2950 | 1650 | 1950 | 2250 |
65~74歳 | 2050 | 2400 | 2750 | 1550 | 1850 | 2100 |
75歳~ | 1800 | 2100 | - | 1400 | 1650 | - |
妊婦さん及び授乳婦は上表の値にプラス補正が付きます。
子供の為にもいっぱい栄養を採ってあげて下さい。
妊婦(初期):+50、妊婦(中期):+250、妊婦(後期):+450、授乳婦:+350
これで自分の1日当たりの必要エネルギー量がわかったと思いますが、この値はBMIを考慮していません。
なので、BMIが22より低いなら多めに、BMIが22より高いなら少なめにエネルギーを採るように意識するなど調整が必要です。
完全に摂取量をコントロールするのは現実的ではないので気持ち少なめ/多め程度で良いと思いますけどね。
一応どのように決められているかを簡単(?)にまとめておきます。
結論から述べると、1日当たりのエネルギー必要量は以下のように求められます。
エネルギー必要量=基礎代謝量×身体活動レベル
基礎代謝量と身体活動レベルについての説明をしていきます。
基礎代謝量
基礎代謝は、生命活動を維持する為の必要最低限のエネルギーでした。
基礎代謝量は、基礎代謝基準値[kcal/kg体重/日]×参照体重[kg]で求めます。
基礎代謝基準値の単位はわかりづらいですが、1日の体重1kg当たりの基礎代謝量の基準値を指しています。
基礎代謝基準値?参照体重??となると思います。
結局のところ、以下の表のように年齢・性別毎に適切な基礎代謝基準値・参照体重・基礎代謝量が定められているということです。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
年齢 [歳] |
基礎代謝基準値 [kcal/kg体重/日] |
参照体重 [kg] |
基礎 代謝量 [kcal/日] |
基礎代謝基準値 [kcal/kg体重/日] |
参照体重 [kg] |
基礎 代謝量 [kcal/日] |
1~2 | 61.0 | 11.5 | 700 | 59.7 | 11.0 | 660 |
3~5 | 54.8 | 16.5 | 900 | 52.2 | 16.1 | 840 |
6~7 | 44.3 | 22.2 | 980 | 41.9 | 21.9 | 920 |
8~9 | 40.8 | 28.0 | 1140 | 38.3 | 27.4 | 1050 |
10~11 | 37.4 | 35.6 | 1330 | 34.8 | 36.3 | 1260 |
12~14 | 31.0 | 49.0 | 1520 | 29.6 | 47.5 | 1410 |
15~17 | 27.0 | 59.7 | 1610 | 25.3 | 51.9 | 1310 |
18~29 | 24.0 | 63.2 | 1520 | 22.1 | 50.0 | 1110 |
30~49 | 22.3 | 68.5 | 1530 | 21.7 | 53.1 | 1150 |
50~69 | 21.5 | 65.3 | 1400 | 20.7 | 53.0 | 1110 |
70~ | 21.5 | 60.0 | 1290 | 20.7 | 49.5 | 1020 |
身体活動レベル
身体活動レベルは以下のような区分になっていると述べました。
身体活動レベルⅠ:日常生活ではほとんど座っている。高齢者が該当。
身体活動レベルⅡ:自立して生きている、運動はあまりしない。
身体活動レベルⅢ:自立して生きている、運動を心掛けている。
この区分は詳しく書くと以下のようになります。
このような振り分けなので、大半の人は身体活動レベルⅡの扱いになります。
身体活動レベルⅠ:主に座って生活している。高齢者が該当。
身体活動レベルⅡ:仕事は基本的に座って行っているが、通勤や買い物などの
歩行・家事に費やす時間が2~3時間程度の人。
身体活動レベルⅢ:立ち仕事や荷物運びなどの仕事量の多い人。
あるいは日常的に運動をしている人。
詳しく知りたい場合は厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」を参照して下さい。
興味深いけどPDFファイルで494ページはねぇ…?
以上、「エネルギー」についての説明でした。