今回は、「バリスタ」についての説明です。
1.バリスタとは?
バリスタとは、英語で[voltage variable resistor]と書きます。
バリアブル レジスタだから略してバリスタということですね。
[variable resistor]だけをそのまま直訳すると[可変抵抗器]になってしまうのですが、バリスタが意味するものは[電圧で抵抗値が変化する抵抗器]です。
自分で好きな抵抗値に変化させることができる可変抵抗器とは全くの別物なのです。
バリスタとは、印加される電圧によって抵抗値が変化する素子のことです。
バリスタへの印加電圧が小さい時はバリスタの抵抗値は高くなり、印加電圧が大きい時はバリスタの抵抗値が低くなります。
普通の抵抗の場合、オームの法則からわかる通り、電圧と電流は比例関係にあります。
なのですが、バリスタに関しては単純な比例関係にはなりません。
実際どのようなグラフを描くのかは後程説明します。
この特徴がどう作用するのかと言うと、静電気などの不意に発生する瞬間的な高電圧(過電圧)から部品を保護するのに役立ちます。
いわゆるESD対策に使用される部品です。
正常時は抵抗値が高いのでバリスタに電流は流れないのですが、何らかの要因で高電圧がかかった場合に限りバリスタの抵抗値が低くなって電流が流れるようになります。
なので、高電圧から保護したいICの入力信号回路にバリスタを接地しておけば、高電圧時のみGNDに電流を逃がす保護回路を構成できるわけです。
2.バリスタの回路記号
バリスタの回路記号(図記号)は以下の通りです。
後程説明しますが、バリスタはツェナーダイオードとコンデンサに密接した関係があるので、その辺りを意識した回路記号になっているのかもしれませんね。
ツェナー[zener]→“Z”
真実は不明ですが、覚える分には丁度良いかと思います。
3.チップバリスタの構造
チップバリスタの構造は、半導体セラミックスを二枚の電極で挟んだものになっています。
セラミックコンデンサとほぼ同じ構造で、セラミックコンデンサにおける誘電体を半導体セラミックスに置き換えたものがバリスタという認識になります。
半導体セラミックスは微細な結晶粒が多数集合した多結晶になっていて、この結晶が細かく均一であるほど安定した特性のバリスタになります。
4.バリスタの電圧-電流特性
バリスタの電圧と電流の関係を図示すると、以下のようになります。
一定の電圧を印加すると急に電流が流れだすことがわかりますね。
ダイオードの電圧-電流特性に似ていますが、一点大きな違いがあります。
それは、グラフの形状が対称になっているという点です。
電圧をプラス方向に増加させようが、マイナス方向に増加させようが、電流の流れる大きさ自体に差は無いのです。
その為、バリスタには極性がありません。
取り付け向きは気にしなくて良いのです。
5.バリスタとツェナーダイオードの関係
バリスタと似たような動作をする素子として、ツェナーダイオードが存在します。
ツェナーダイオードには、逆方向に接続すると電流が変化しても電圧がほぼ一定になるという特性があります。
この特性を利用することで、静電気などのサージを吸収する用途で使用されます。
バリスタもサージから回路を保護する用途で使用するので、バリスタとツェナーダイオードは似ているのです。
ただ、何度も“似ている”と言っている通り、明確な違いがあります。
それは、極性があるか無いかです。
先程説明しましたが、バリスタには極性が無いです。
ですが、ツェナーダイオードは“逆方向に”接続した時にサージを吸収する作用があります。
つまり、ツェナーダイオードは一方向にしか対応していないのです。
大きな違いはここです。
まあ、だからツェナーダイオードの方が劣っているというわけではないですけどね。
逆方向に”接続した時にサージを吸収する作用があります。
つまり、ツェナーダイオードは一方向にしか対応していないのです。
大きな違いはここです。
まあ、だからツェナーダイオードの方が劣っているというわけではないですけどね。
そもそもバリスタの等価回路を描くと以下のようになります。
二つのツェナーダイオードを反対向きにして接続し、それにコンデンサを並列接続したものがバリスタになります。
なので、この関係から各々の利点を簡単にまとめると以下のようになります。
便利なのはバリスタだけど、ピンポイントでサージを抑えたい場合はツェナーダイオードを使った方が完璧に保護できるという感じですね。
以上、「バリスタ」についての説明でした。