今回は、「VCM(ボイスコイルモータ)」についての説明です。
1.VCMとは?
ここで説明するVCMとは、[Voice Coil Motor(ボイスコイルモータ)]のことです。
直訳すると音声コイルモータです。
その名の通りスピーカ(音声再生機能を持つ機器)と動作原理が同じです。
ただ、動作原理が同じというだけでスピーカと直接的な関係は無いです。
動作原理が同じだからそう呼ばれているだけということです。
一般的なモータは電気的エネルギーを機械的エネルギー(回転エネルギー)に変換するものですが、VCMはリニアモータという分類になります。
リニアモータの一般的なモータとの違いは、回転する軸が無いことです。
リニアモータは[linear(直線的な)]と付いているだけあって、直線運動をします。
まあ、直線と言ってもガイドに沿わせることで曲線に対応させることも可能ですけど。
VCMの場合、磁石が発生させた磁界中をコイルが往復運動するタイプの単相モータ(単相交流で駆動するモータ)になっています。
あくまで動くのはコイルなので、回転する軸は無いです。
だから分類がリニアモータなのです。
可動部がコイルなので、ムービングコイルタイプ・ムービングコイルアクチュエータとも呼ばれるようです。
2.VCMの構造と動作原理
VCMは磁界中をコイルが往復運動すると述べました。
その為、動作原理には電磁誘導が大きく関わってきます。
VCMの構造は単純で、ヨークと磁石で構成した磁気回路内にコイルを配置しただけです。
このコイルに電流を流すことでフレミング左手の法則に従った方向に電磁力(推力)が発生するので、電流を流す方向を変化させることでコイルの移動方向を切り替えることが可能です。
ヨークとは、磁石が持つ吸着力を増幅してくれる軟鉄の総称です。
漢字だと継鉄と書きますが、読み方はヨークのままのようです。
それわざわざ漢字表記する必要ある?
VCMの構造は図1のようになっているとイメージしてください。
コイルをヨークに直接巻き付けるわけにもいかないので、実際はコイルの内側に非磁性のコイルボビンというものを挟みます。
図1には面倒なので描いてませんが(笑)
図1のイメージは平面状のものですが、円筒状のものなど他にも種類はあります。
ですが、構造自体に大きな違いはありません。
円筒状の場合は、図2のような構造になります。
見てわかる通り、磁石の間にコイルが配置されているという構造は結局同じです。
図2のコイルにて赤矢印の方向に電流が流れていた場合、フレミング左手の法則より奥の方向に電磁力(推力)が発生することがわかります。
電流の向きが反対になると手前に電磁力(推力)が発生します。
以上のように、構造及び原理は非常に単純なものとなっています。
電磁誘導とフレミング左手の法則を知らないと理解不能だと思うので、そちらを先に理解することから始めましょう。
ちなみに、コイルにコーン紙と呼ばれるものを接続して電磁力によってコーン紙が振動するようにすると、音声を発声するようになるらしいです。
これがスピーカの原理です。
ほんとよくこんなこと考えつきますよねー。
3.VCMの特徴
VCMには以下のような特徴があります。
- 小型化高推力
- 高速な応答性
- 制御性が高い
- 移動距離(ストローク)に限りがある
個別に補足説明をしていきますね。
・小型化高推力
構造が単純なので小型化に向いている上、より強力な磁石(磁束密度・磁界の強さが大きいもの)を使用するとそれだけ電磁力(推力)が増加します。
・高速な応答性
可動部がコイルなので軽量です。
また、構造が非常にシンプルです。
その為、応答速度が高速になります。
・制御性が高い
エネルギーの損失(ヒステリシス損)が少なく、電流と電磁力(推力)の関係(※)は比例する為、制御が正確になる。
※ 電磁力=磁束密度×電流×導体の長さ
・移動距離(ストローク)に限りがある
コイルに電流を流す関係上、リード線が必要不可欠です。
ですが、コイル自体が可動部なので、コイルの動きに付随してリード線も動きます。
その為、コイルの移動距離(ストローク)はリード線の長さに依存してしまう。
まあ、小型・精密・高速動作がウリなので、移動距離というデメリットはあまり関係なかったりもしますけどね。
以上、「VCM(ボイスコイルモータ)」についての説明でした。