今回は、「オープンコレクタ方式の回路構成と動作原理」についての説明です。
目次
1.オープンコレクタとは?
オープンコレクタとは、トランジスタのコレクタ端子が文字通りオープン・未接続になっている状態のことです。
このオープンになっているコレクタ端子を出力端子とした方式のことをオープンコレクタ方式と呼びます。
ICやセンサの出力ポートとしてよく利用されているので、耳にすることは多いと思います。
オープンコレクタ方式にはnpn型/pnp型トランジスタのどちらでも使用可能で、エミッタ/コレクタ接地をするという場合分けによって回路構成や出力端子の繋ぎ方は変わってきますが、トランジスタのスイッチング機能を利用して出力を切り替えているという点は共通しています。
ベース端子に入力信号を与えてトランジスタをON/OFFにスイッチングできるようにして、「トランジスタONでGNDもしくは電源VCCに繋ぐ」・「トランジスタOFFで何も繋がない」という2択の出力をできるようにしています。
その為、トランジスタがOFFの時は何も出力されないので、外部にプルアップ抵抗もしくはプルダウン抵抗を別途用意する必要が出てきます。
プルアップ抵抗とプルダウン抵抗については別途まとめてあるので、以下の記事も参考にしてみてください。

ちなみに、日本の場合は基本的にnpn型トランジスタを使用し、エミッタ接地になっていることが多いです。
ヨーロッパ方面だとpnp型トランジスタが多くなります。
2.npn型トランジスタのオープンコレクタ方式の動作
npn型トランジスタのオープンコレクタ方式は、以下のような回路構成になります。

回路構成は単純ですね。
主回路からトランジスタのベース端子に向けて制御信号が出力されるので、その信号に応じた出力に切り替わります。
まず、トランジスタをスイッチングさせるだけのベース電流IB及びベース-エミッタ間電圧VBEを主回路から出力した場合について考えます。
この場合、トランジスタはONになります。
なので、コレクタ-エミッタ間に電流が流れるようになります。
すると、以下のような経路に電流が流れることがわかります。

出力端子は外部機器側にも繋がるわけですが、IC内部のトランジスタ側には抵抗が接続されていません。
その為、出力機器側の方が抵抗が大きく、ほぼ全電流がIC側に流れ込むようになります。
ここで、OUT端子にかかる電圧がいくらになるか考えてみましょう。
OUT端子とGNDの間には、トランジスタのコレクタ端子とエミッタ端子があり、コレクタ-エミッタ間にはコレクタ飽和電圧VCE(sat)が発生しています。
なので、OUT端子の電圧はコレクタ飽和電圧VCE(sat)に等しいことがわかります。
この電圧が外部機器に供給されるのです。
コレクタ飽和電圧VCE(sat)はせいぜいコンマ数[V]程度です。
なので、外部機器としてはLowレベルだと認識するわけです。
よくオープンコレクタの説明で『出力は0[V]になる』と書かれていますが、アレはわかりやすく説明するためにコレクタ飽和電圧VCE(sat)の存在を除外しているんですよ。
結局Lowレベルだと認識されることに変わりはありませんからね。
素で間違えている人がいる可能性は否定できませんが…。
次は、トランジスタをスイッチングさせるだけのベース電流IB及びベース-エミッタ間電圧VBEを主回路から出力しなかった場合について考えます。
この場合、トランジスタはOFFになります。
なので、コレクタ-エミッタ間に電流は流れません。
すると、以下のような経路に電流が流れることがわかります。

つまり、VCC-R-外部機器という繋ぎになるんですね。
その為、OUT端子の電圧は外部機器の入力抵抗とプルアップ抵抗RでVCCを分圧した値になります。
基本的にプルアップ抵抗は4.7[kΩ]または10[kΩ]になっていることが多く、外部機器側の入力抵抗はプルアップ抵抗に対して非常に大きな抵抗値になっています。
それを踏まえて分圧すると、OUT端子にはほぼVCCの電圧がかかることになります。
なので、外部機器としてはHighレベルだと認識するわけです。
これがnpn型トランジスタのオープンコレクタ方式の動作原理です。
3.pnp型トランジスタのオープンコレクタ方式の動作
pnp型トランジスタのオープンコレクタ方式は、以下のような回路構成になります。

回路構成は微妙に変わっていますが、考え方はnpn型の時と大差ありません。
説明は巻いていきます。
トランジスタがONになる時は、エミッタ-コレクタ間に電流が流れるようになります。
すると、以下のような経路に電流が流れることがわかります。

その為、OUT端子にはほぼVCCの電圧がかかることになります。
なので、外部機器としてはHighレベルだと認識するわけです。
トランジスタがOFFになる時は、エミッタ-コレクタ間に電流が流れなくなります。
すると、外部機器にプルダウン抵抗が直接繋がれることになります。
よって、外部機器としてはLowレベルだと認識するわけです。
このように、npn型とpnp型で回路の動作が変わってきますので、オープンコレクタ出力を使用する場合はしっかりとデータシートを確認してnpn型なのかpnp型なのかを確認しましょう。
4.pnp型トランジスタのオープンコレクタ方式を使う利点
日本ではnpn型トランジスタのオープンコレクタ方式を使われている場合が多いと述べました。
これは、昔からnpn型を使っていたので、それに合わせて機器を作成することが多くなったからです。
なのですが、実はpnp型の方が安全性は高かったりします。
先程npn型とpnp型の動作原理を説明しましたが、もしOUTラインがGNDと短絡したらどうなるでしょうか?
npn型の場合、トランジスタをOFFにしていてもONした時と同じ状態になってしまいます。
つまり、入力機器は常に誤動作し続けるんです。
それに対してpnp型は、トランジスタをOFFにしている限り、入力機器は誤動作しないんです。
その為、規格がよりキッチリとしているヨーロッパ方面ではpnp型が選択されているわけです。
上記の理由から、ヨーロッパ向けに製品を開発する場合、pnp型で設計する必要が出てきたりします。
ちなみに、npn型とpnp型で変換するような製品も存在するので、最悪その製品を使用すればnpn型をpnp型として使用することもできます。
5.オープンコレクタ方式のメリットとデメリット
メリット
何かと面倒くさそうなオープンコレクタ方式ですが、こんな形式が存在するのはもちろんメリットがあるからです。
いくつか紹介していきますね。
例えば、npn型トランジスタを用いたオープンコレクタ出力ICは24[V]の駆動電圧が与えられていたとします。
それに対して、外部接続機器は5V駆動だったとします。
ただ単に印加されている電源電圧を出力するICだった場合、外部接続機器に24[V]がそのまま出力されることになるので、過電圧になってしまいます。
その点、オープンコレクタ方式ならプルアップ抵抗に5V電源を供給するだけで良いのです。
要は、以下のような回路構成にすれば良いんですね。

トランジスタの駆動は24V電源で行っても、出力端子側は5V電源で駆動するんです。
ややこしい電圧変換などは不要なのは大きな利点と言えます。
プルアップ抵抗は4.7[kΩ]または10[kΩ]になっていることが多いと先程述べました。
それに対して供給される電圧は大きくても24[V]程度なので、数百μA~数mAくらいしか回路に電流は流れません。
その為、LEDのような小電力で駆動する素子は直接繋ぐことが可能です。
オープンコレクタ方式はリレーで代用できるのですが、リレーって結構でかいんですよ。
オープンコレクタならトランジスタを利用するだけなので、非常に小型で済みます。
ワイヤードOR接続と呼ばれる接続方法です。
複数のオープンコレクタ出力ICを用意し、その出力端子を一纏めにして外部機器に接続することが可能です。
こうすることで、全てのオープンコレクタ出力ICがOFFになっていない限り、出力がHighレベルになることはありません。(※npn型の場合)

デメリット
デメリットもいくつか紹介します。
先程も説明しましたが、日本ではnpn型トランジスタを使用していることが“多い”です。
“多い”のであって、pnp型を使用していることも普通にあります。
なので、回路接続をミスしてうまく駆動しない可能性があります。
この記事を読んでいるということは、『オープンコレクタ方式とか製品に書かれているけど、これは何?』という状態に陥ったということだと思います。
ここでもう一度良く考えてみてください。
なんで検索したのでしょうか?
製品のデータシートにオープンコレクタ方式の説明が満足にされていないからではないですか?
このように、オープンコレクタ方式が電気の業界では一般常識のような扱いを受けているので、知ってて当然の扱いでちゃんと説明してくれないことって多いんですよ。
これは駆け出しの技術者には大きなデメリットと言えるでしょう。
他にもデメリットが無いわけではないですが、総じてメリットの方が多いです。
なので、オープンコレクタ方式は色んなICで当たり前のように使われています。
ちなみに、FETを使用したオープンドレイン方式というものも存在しますが、やっていることはオープンコレクタ方式と同じです。
トランジスタがFETになっただけです。
以上、「オープンコレクタ方式の回路構成と動作原理」についての説明でした。