今回は、「抵抗の基礎」についての説明です。
目次
1.抵抗の用途
「電気回路の基礎」の説明で抵抗は電流の流れにくさだと述べましたが、電流の流れを妨げるもの自体も抵抗と呼びます。
厳密には抵抗器なのですが、省略して抵抗と呼んでいるのが現状ですね。
電気回路で使用されている抵抗は、「流れる電流を調整する」、「電圧を分配する」、「時定数を決定する」と言った重要な役割を持っています。
2.抵抗の種類
実際にどんな抵抗があるのかをいくつか紹介します。
チップ抵抗器
固定抵抗器(抵抗値が一定)の一種。
その名の通りチップ状の抵抗器で、非常にコンパクトです。
小型なので占有面積が少なく、プリント基板にこれでもかと使われています。
形状は直方体で、上から見た時の縦横比がそのままサイズ呼称になっています。
縦横比が0.6mm×0.3mmのものを0603(ゼロロクゼロサン)と呼び、1005(イチマルマルゴ)、1608(イチロクマルハチ)などのサイズが存在します。
図1のような見た目をしていて表面にサイズが書かれている場合があるが、メーカによっては米国向けにmm表記ではなくinch表記になっている点に注意が必要です。
inchとmmの換算方法が気になる場合は、以下の記事も確認してみてください。
また、図2のように抵抗値が書かれているものもあります。
まあ、実物を見れば大体のサイズがわかるから間違えないとは思いますけど。
inch表示で0603だったら実際のサイズは1.6mm×0.8mmですからね。
見ればわかります。
例えば、図1の0603はinch表示なのでmmに変換すると1608サイズを表していて、図2の102は10×102[Ω]の抵抗値を表しています。
ちなみに、昨今は技術力の向上により0402(0.4mm×0.2mm)まで開発されていて、ここまで来ると手実装は難しくなってきます。
0201も開発中とのことです。
※ 私は0603までしか手実装を試したことがありません。はんだ付け作業は問題無いのですが、個人的にはピンセットで掴んでいるのが辛かったです。使い古したピンセットだとうまく噛み合わないから、抵抗が吹き飛んで見失うんですよ…。
炭素皮膜抵抗器/金属被膜抵抗器
固定抵抗器(抵抗値が一定)の一種。
材質が炭素/金属の抵抗。
抵抗からリード線を延ばした形状をしている為、リードタイプに当たる。
リードを折り曲げてプリント基板の穴(スルーホール)を通し、はんだ付けする。
炭素皮膜抵抗器は抵抗値の許容差(誤差)が大きく、一般的に±5%とされている。
金属皮膜抵抗器は一般的には許容差は±1%で、±0.5%なんてものもある。
では全て金属皮膜抵抗器にしてしまえば良いと思うかもしれませんが、金属皮膜抵抗器の方が炭素被膜抵抗器よりもコストが高いです。
なので、許容誤差が動作に影響するかどうかを判断して使い分けましょう。
中学・高校くらいの授業で、モータを動かす実験か電球を光らす実験なんかをする時に見たことがあるかもしれません。
下図のベージュの抵抗器が炭素皮膜抵抗器で、青い抵抗器は金属被膜抵抗器に当たります。
色で見分けが付くんですよ。
可変抵抗器(ボリューム)
抵抗値を変更可能な抵抗。
ボリュームとも呼ばれる。
オーディオの音量調整の摘まみなんかがこれに当たります。
抵抗器は抵抗値の状態により固定抵抗器・半固定抵抗器・可変抵抗器に分類されます。
固定抵抗器は名称から抵抗値が変化しないのだろうと想像が付きますよね?
同様に、可変抵抗器も名称通りに抵抗値が変更可能です。
図4左のように通常の抵抗にもう1本リードが追加されていて、リードcを移動することによって抵抗値を調整しているイメージです。
例えば、リードcを左に動かせばa-c間の抵抗値が低くなり、b-c間の抵抗値が高くなる…といった具合です。
実際は、図4右のレバーのようなものを動かすことにより抵抗値を調整します。
半固定抵抗器
固定抵抗器として使用する可変抵抗器。
結局は可変抵抗なわけですが、可変抵抗は変更を前提としているのに対して半固定抵抗は1度変更したらそのままの値で使用するような用途となっています。
つまり、調整する回数が少ないので半分固定抵抗のようなものです。
直流電源に付いていることが多く、最初に抵抗を変化させることで出力電圧を調整できます。
シャント抵抗器
電流測定用に回路へ挿入する抵抗器。
シャント[shunt]には[退避する・脇へそらす]などの意味があります。
実際にどんな使い方をするのかというと、電流計と並列に接続して分流するために使用します。
シャント抵抗器での分流は、電流計の測定範囲の拡大を目的としています。
要するに、シャント抵抗器に流れる電流も測ることで、測定できる電流の最大値を引き上げようとしているわけです。
実際、電流計に表示される電流をI、電流計の内部抵抗をr、シャント抵抗器の抵抗値をRとすると、回路に流れる全電流は(1+r/R)Iになります。
本来は上記のように並列に入れる抵抗を指していたのですが、昨今は電流検出用に使用するならシャント抵抗器と呼ぶようになっています。
どういうことかと言うと、普通に直列回路に抵抗器を繋いで、抵抗器の両端の電圧を測定し、オームの法則を適用すると抵抗器に流れる電流を求めることができますよね?
この用途の抵抗器もシャント抵抗器と呼ぶわけです。
ちなみに、シャント抵抗器の抵抗値は0.2mΩ~数mΩ程度と小さいものになっています。
あまり大きいと回路全体の抵抗が大きくなって電流測定結果に影響してしまいますからね。
巻線抵抗器
抵抗体(抵抗を持つ素材)を芯として金属線を螺旋状に巻いた抵抗器。
大電力で使用可能・温度変化による抵抗値の上下が少ないという特徴を持つ。
また、螺旋状に金属を巻いたのでコイルと同じ性質を持ち、交流電流を流す場合はなおさら抵抗値が高くなる。
後述のメタルクラッド抵抗器とセメント抵抗器の中に入っています。
メタルクラッド抵抗器
絶縁した上で金属製の外装を取り付けた巻線抵抗器。
[metal(金属)]を[clad(被膜する)]した抵抗器です。
放熱に向いている金属ケースの中に巻線抵抗器を入れて保護してあるので、様々な環境変化に耐性を持ちます。
耐熱性・耐圧性・耐湿性などです。
反面、コストは一個数百円と高めになっています。
色々耐性を持っている且つ放熱もできるので、中~大電力に用いられます。
メタリックな見た目をしているので、一目見ればメタルクラッド抵抗器だと判断できます。
セメント抵抗器
セメントで固めた巻線抵抗器。
セメントが熱や振動の影響を低減させてくれるので、中~大電力に用いられる。
要するに、熱に強くなって絶縁性を持った巻線抵抗器がセメント抵抗器です。
セメントが不燃性の物質である為、燃えることはなくとも巻線抵抗は非常に高温になる点は注意が必要です。
ホーロー抵抗器
琺瑯で固めた巻線抵抗。
耐熱性が非常に高いので、大電力に用いられる。
琺瑯とは、金属の表面にガラス質の釉薬(ゆうやく/光沢を出すために素焼きの表面を覆うガラスのこと)を焼き付けた素材のことです。
ただ、近年は釉薬ではない不燃性塗料を使用するようになってきているので、厳密には琺瑯ではない種類も存在するようです。
それでもホーロー抵抗器とそのまま呼んでいるようですけどね。
ヒューズ抵抗器
ヒューズと同様の働きをする抵抗器。
普段は普通の抵抗器として機能するのですが、ある一定以上の電流を流すと高温になって溶断し、回路を遮断することができます。
抵抗として使用しつつ、異常時に発煙・発火することなく溶断して下層の回路を守れるのが特徴です。
ただ、ヒューズ抵抗器はヒューズと比較して溶断特性が悪いです。
溶断するまで時間がかかったり、溶断する電力値にバラつきが出ます。
なので、異常時に即回路を遮断して保護したい場合は、ヒューズ抵抗器ではなくちゃんとしたヒューズを使うべきです。
ちなみに、ヒューズ抵抗器とヒューズ付き抵抗器は別物です。
前者はヒューズとして機能する抵抗器、後者はヒューズがセットになった抵抗器です。
抵抗アレイ
複数の抵抗をワンパッケージ化した製品。
3.カラーコードとは?
炭素皮膜抵抗/金属皮膜抵抗にはカラーコードと呼ばれる抵抗値と許容差を示す色の帯(バンド)があります。
帯は大体4本で構成されているので、その見方について記述します。
5本と6本のものもあるらしいのですが、私は見たことがありません。
図3に示したように4つの帯があるわけですが、左から順に第1色帯~第4色帯と呼ばれます。
第1色帯と第2色帯が数値、第3色帯が10の何乗か、第4色帯が許容差を示しています。
色ごとに表す数値が決められていて、以下の表のようになっています。
色 | 第1色帯 | 第2色帯 | 第3色帯 | 第4色帯 |
---|---|---|---|---|
黒 | 0 | 0 | ×100 | - |
茶 | 1 | 1 | ×101 | ±1% |
赤 | 2 | 2 | ×102 | ±2% |
橙 | 3 | 3 | ×103 | ±0.05% |
黄 | 4 | 4 | ×104 | ±0.02% |
緑 | 5 | 5 | ×105 | ±0.5% |
青 | 6 | 6 | ×106 | ±0.25% |
紫 | 7 | 7 | ×107 | ±0.1% |
灰 | 8 | 8 | ×108 | ±0.01% |
白 | 9 | 9 | ×109 | - |
金 | - | - | ×10-1 | ±5% |
銀 | - | - | ×10-2 | ±10% |
無 | - | - | - | ±20% |
第1色帯~第3色帯については、以下のように考えておけば大体忘れなくなります。
- 黒(0)から白(9)に変化していく。
- 赤っぽい色/茶(1)から青っぽい色/紫(7)に変化していく。
第4色帯だけ覚えづらいのですが、基本的に金か銀、次点で茶の色帯しか見る機会は訪れないので、その三色だけ最低限覚えておけば問題ないです。
実際の見方ですが、例えば第1色帯~第4色帯が茶茶赤金となっていたら、11×102=1100[Ω]で許容差は±5%となります。
4.抵抗値とE系列
抵抗値は、13Ωや47Ωといった一見中途半端に感じる値のものが存在します。
これらの値は規格で定められていて、E系列と呼ばれます。
E12系・E24系・E96系などが存在します。
Eは指数のeで、E12系列なら1~10の数字を12√10(10の12乗根)で12分割したものになります。
言い替えると、対数グラフ上で等間隔になるように分割した値になっています。
※ 意味がよくわからなくても特に問題無いです。
E24系列が最も一般的なので、E24系列について載せておきます。
1.0 | 1.1 | 1.2 | 1.3 | 1.5 | 1.6 | 1.8 | 2.0 |
2.2 | 2.4 | 2.7 | 3.0 | 3.3 | 3.6 | 3.9 | 4.3 |
4.7 | 5.1 | 5.6 | 6.2 | 6.8 | 7.5 | 8.2 | 9.1 |
E系列について説明すると長くなるので、詳しくは次の記事にまとめてあります。
ちなみに、E系列はコンデンサにも適用されています。
5.抵抗値許容差の記号
カラーコードの説明時に抵抗値の許容差の話が出てきましたが、他の抵抗器にももちろん許容差は存在します。
この許容差をアルファベットで表示してある場合がありますので、参考となる表を記載しておきます。
A | B | C | D | F | G | H | J | K | M |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
±0.05 | ±0.10 | ±0.25 | ±0.50 | ±1.0 | ±2.0 | ±3.0 | ±5.0 | ±10 | ±20 |
アルファベットが後ろになるほど許容差が大きくなると覚えておけば、大体どの程度の許容差なのかの想像は付くようになっています。
ただ、間が何故か飛び飛びになっているので、明確に覚えているという人は少なそうですね。
以上、「抵抗の基礎」についての説明でした。