今回は、「ひずみゲージ」についての説明です。
1.ひずみとひずみゲージ
“ひずむ”という言葉を聞いたことがありますか?
漢字では“歪む”となります。
“歪む”と書くと“ゆがむ”とも読めるので、モノが変形する様を想像するのではないでしょうか?
実際その通りで、ひずみとは力を加えることで対象が伸びたり縮んだりした時の変形量のことを指しています。
そのひずみの変形量を測定する部品がひずみゲージです。
例えば、建造物は自然の影響を考えると十分な強度を確保していて欲しいですよね?
デザイン・構造・材質などを考慮して建てるでしょうが、どの程度の強度を持ってるのかはあらかじめ知っておきたいです。
そのために建造物の強度を測る必要があります。
強度を知るということは、建造物の材質がどの程度の応力を受けた時に変形・破壊されるかを知ることに等しいです。
つまり、ひずみを測る行為と等しいので、そんな場合はひずみゲージの出番となるわけです。
2.ひずみゲージの原理
金属は変形すると抵抗値が変化します。
ひずみゲージも金属でできていて、その変形の度合いに応じて抵抗値が変化します。
この抵抗値の変化を利用して荷重測定を行うのがひずみゲージです。
そもそも金属が変形すると抵抗値が変化する理由から解説していきます。
金属というと硬いイメージがあるかと思いますが、引っ張れば伸びますし、押せば縮みます。
伸びたり縮んだりしているように見えないだけで、実際は微量にひずんでいるんです。
今、図1のように応力を加えた際に金属が変形したとします。
※ 図1の例ではイメージをしやすくする為に大袈裟に伸び縮みさせています。
導体の電気抵抗は、導体の長さに比例し、導体の断面積に反比例するという関係が成り立っています。
この関係については別途まとめてあるので、ここでの説明は省略します。
気になる方は以下の記事を参考にしてください。
図1を見てわかる通り、伸びた金属は長さが増加して断面積が減少し、縮んだ金属は長さが減少して断面積が増加します。
その為、金属が伸びた場合は抵抗値が大きくなり、金属が縮んだ場合は抵抗値が小さくなります。
これが金属が変形すると抵抗値が変化する理由です。
ひずみゲージは、ひずみを測りたい対象に専用の接着剤を用いて貼り付けます。
そうすることで対象の変形に応じてひずみゲージも変形する為、ひずみゲージの抵抗値の変化からひずみ量を算出することが可能になります。
抵抗値の変化からひずみを求めることができるわけですが、実際は抵抗値の変化に応じて変化する電圧を観測しています。
ひずみゲージを使用した製品にロードセルというものがあります。
ロードセルとは荷重(力)を検出するセンサの役割をする装置のことを指していて、光や電磁力を利用したタイプなどがある中、ひずみゲージを使用したものもあります。
寧ろ、最もロードセルとして一般的なのはひずみゲージを用いたタイプです。
ロードセルは種類によってひずみゲージの使用数が異なります。
ここでは、例としてひずみゲージを4つ使用した場合について考えてみます。
4つのひずみゲージをひずみの発生する箇所に貼り付けて、ひずみゲージでホイートストンブリッジ回路を組みます。
こうすることでひずみに応じた微小な電気信号(電圧)が出力されるので、信号を増幅して計器に接続することで荷重を測定しています。
抵抗値の変化に応じて電圧を測るというのはこのことを指しています。
3.ひずみゲージの構造
ひずみゲージは以下のような構造になっています。
薄いフィルム状の絶縁物の上になんかものすごく細い金属導体(金属箔)が何度も折り返し配置されていて、そこからリード線が延びています。
この絶縁物はベースと呼ばれていて、一般的にはシリコン系の樹脂が使用されています。
細い金属導体部分はフィラメントと呼ばれています。
フィラメントという言葉は細かい糸状の物質を指しているので、見たまんまですね。
フィラメントが露出していると感電の要因になるので、実物は樹脂のカバーでしっかり覆ってあります。
つまり、樹脂ベースと樹脂カバーでフィラメントをサンドイッチにして、その隙間からリード線が延びているという構成がひずみゲージです。
ベースを専用の接着剤でひずみを測りたい対象に貼り付けて使用します。
貼り付けたひずみゲージはひずみに応じて左右方向に伸ばされる為、フィラメントはまとめて伸びて細長くなります。
導体の電気抵抗は導体の長さに比例し、導体の断面積に反比例します。
フィラメントは何度も折り返し配置されている為、抵抗値が顕著に変化するようにわざとこんな構造にしているんだと思います。
実際、ひずみゲージは伸ばした分の約2倍程度電気抵抗が変化するようにできています。
この比率のことをゲージ率やゲージファクタと呼びます。
ちなみに、フィラメントの直線になっている箇所の長さをゲージ長と呼びます、
4.ひずみと応力の関係
金属は、多少応力をかけて変形させても元の形状に戻ります。
ですが、ある一定以上の応力をかけると変形したままの状態を保ち、元の形状に戻らなくなります。
元の形状に戻ることのできる範囲を弾性域、それ以上の範囲を塑性域と呼びます。
ひずみゲージはこの弾性域内で使用されています。
ちなみに、塑性とは応力をかけてモノを変形させた時に変形した形を永久的に保つ性質を指します。
今、金属材料を引っ張り、その負荷を少しずつ増していったとします。
その時の応力とひずみの関係は以下の通りです。
応力が小さいうちは弾性域に位置し、弾性域では応力とひずみは比例関係にあります。
弾性域が比例しているからひずみゲージとしての性質が成り立っているとも言えます。
この時点では弾性域なので負荷をかけなければ元の形状に戻ります。
ですが、弾性域から塑性域に差し掛かると応力とひずみの関係が成り立たなくなって、負荷をなくしても元の形状に戻らなくなります。
この弾性域と塑性域の境目のことを降伏点と呼びます。
塑性域では金属材料が元の形状に戻らなくなるので、ひずみゲージとして使用できないのは明確ですよね。
変形したままということは抵抗値も変化したままになるということですから。
ちなみに、降伏点を超えてどんどん応力を増していくといつか金属材料は千切れます。
以上、「ひずみゲージ」についての説明でした。