【電気電子の雑学】 接地記号の種類 ~グランドやアースの意味の明確な違いとは?~

電気電子
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本ブログには電気電子系の知識を備忘録的にまとめてあります。
自分なりにカテゴリ分けをして何かしら共通点のあるWebページは連番になるようにまとめているのですが、どこにも分類されないものも当然存在します。
本記事は、未分類ですが内容としては知っておきたいと思ったことについてわかりやすくまとめたものとなっています。

今回は、「接地記号の種類」についての説明です。

1.初めに

電気系の仕事に関わると、GND(グランド)・SG(シグナルグランド)・FG(フレームグランド)のような“○○グランド”という名前になっているものが複数登場します。
似たような用語でアース(接地)なんてものもありますよね。

私個人としてはGNDは基準点FGは感電防止の接地のことという簡単なイメージは持っていたのですが、よくよく考えると誰かに教えてもらったわけでは無く、業務を行っているうちになんとなく理解していた内容でした。

なので、今回は“グランド”と“アース”の違いについてしっかりとまとめていきたいと思います。

2.グランドとアースの意味

グランドとアースの意味を端的に述べると、以下のようになります。

グランド

回路の基準電位。

アース

大地への接続・接地。

グランドの本来の意味は基準電位で間違っていないのですが、グランドという名称が付いているにも関わらず大地への接続の意味で使われる単語も存在します。
厳密には、大地へ接続してそこを基準点とすることがあるからグランドという名前の付くアースが存在します
なので、グランドの一部にアースが含まれていることがあるんです。
ややこしいですね。

3.グランドとは?

基準電位とか言われても意味が分からないと思うので、具体例を用いて説明していきます。
電圧や電位の話が出てくるので、自信の無い方は先に以下の記事を先に読んで予習をしてください。

今、抵抗に電池を2つ直列に繋いだ単純な回路があるとします。
電池は1個当たり約+1.5[V]の起電力を持ちます。

図1

この場合、皆さんは端子Aと端子Cのどちらがグランドだと思いますか?
おそらく端子Aの位置する電池のマイナス側だと思うのではないでしょうか?
実は、この認識が間違いなのです。

では、端子Cがグランドなのかと言うとそうとも言い切れません。
答えは、端子Aも端子Cもグランドに成り得るです。

この時、A点・B点・C点にテスタ(電流や電圧を測れる機器)のプローブを接触させることで各部の電位差を測るとします。

テスタのプローブは赤と黒に分かれていて、黒の方が基準となります。
つまり、黒プローブを当てた地点に対して赤プローブを当てた地点はどの程度の電位を持っているかをテスタで測定することができるわけです

実際に電位差を測ると以下のような結果になります。

  • 黒プローブをA点、赤プローブをB点に当てた場合…+1.5[V]
  • 黒プローブをA点、赤プローブをC点に当てた場合…+3.0[V]
  • 黒プローブをB点、赤プローブをC点に当てた場合…+1.5[V]
  • 黒プローブをB点、赤プローブをA点に当てた場合…-1.5[V]
  • 黒プローブをC点、赤プローブをA点に当てた場合…-3.0[V]
  • 黒プローブをC点、赤プローブをB点に当てた場合…-1.5[V]

この結果には特に疑問は無いかと思います。
黒プローブを基準としているので、電位差の高い点に黒プローブを当てて基準とした上で電位差の低い点を赤プローブに当てると、基準より低い電位が検出されて極性が“-”になるというだけの話ですから。
この基準の考え方がグランドなのです。
GNDは勝手に決まるものではなく、自分で決めるものなのです。

例えば、黒プローブをB点、赤プローブをA点に当てた場合のグランドはB点だということです。
グランドが基準電位というのはこういうことです。

グランドはあくまで基準点であって、0[V]とは限らないのです。

電源のマイナス側をグランドに設定すれば回路上の電位の一番低い部分を基準電位にできるので、グランド以外の箇所が全て正の値で扱えて電気の流れがわかりやすくなります。
だから電源のマイナス側をグランドとしていることが多いのです。
たったこれだけのことなんです。

教科書だと回路の基準電位がグランドだと書かれているとは思いますが、ここで説明したような考え方が載っているかは怪しいところです。
仮に載っていたとしても、以降の演習問題では電源のマイナス側をグランドとするのが当たり前になっているので、勘違いする人が多発するんです。
まあ、演習問題を解くだけなら何も困らないしね。仕方ないね。

4.アースとは?

アースとは、[earth(地球・大地)]のことです。
つまり、いわゆるアース線は地面に繋げられています
アースのことを接地と呼ぶのもこのことから来ているわけですね。
本当に地面に接続しているんです。

アースの目的は電気を逃がして感電を防ぐことにあります。
仮に漏電している機器に人が触れた場合、電気は人体を通って地面に流れていきます。
電気は抵抗が小さい(電気の流れやすい)経路を通る特性がある為、容易に人体を経由してしまいます。
これが感電という現象です。

なので、感電を防ぐためにより電気の流れやすいアース線をあらかじめ繋いでおくわけです
感電のメカニズムについて詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。

アース線は日常生活を送っているとその辺に普通にあります。

例えば、電子レンジや洗濯機の近くに緑と黄色が螺旋状になっていて先端に端子がくっついている電線を見たことがありませんか?
あれがアース線です。

図2 出典:Amazon

ちなみに、ポ〇モンでじめんタイプにでんきタイプの攻撃は効果がありませんが、実際はじめんは地球上で最も大きな導体なので、でんきは普通に流れます。
流れますが、影響は無いです
だから効果が無いんですよ。

5.グランドとアースの種類と回路記号

では、肝心のグランドとアースの種類について触れていきます。
種類は、以下のように分かれています。

図3

個別に補足説明をしていきますね。

シグナルグランド

回路の基準電位のことです。
SGと略されていることがあります。
一般的な電子回路のグランドとして使われるのがこの記号です
本来の意味のグランドということですね。

シグナルグランドを基準として回路が動作するので、基本はグランドは1点にするのが望ましいです。
なので、この記号を用いてグランドを共通化するのが一般的です。
回路内を回り巡って戻ってくる部分の経路に当たり、回路間の電圧を安定させるための措置と言えます。
その為、普通はアースを取ることは無いです。

シグナルグランドは本来は1点とするべきなのですが、実際はそうもいきません。
一口に回路と言ってもアナログ回路・デジタル回路・電力回路など様々な回路が混在していることがあるからです。

これらの回路が混在している状態でシグナルグランドを1点にまとめてしまうと、諸々問題が発生します。
例えば、信号の変化の大きい電力回路の影響でシグナルグランドの電位が変動してしまい、微小な信号であるアナログ回路に大きな影響を与えてしまったりとかですね。
日頃運動している人と全く運動していない人がいたとして、運動をしている人基準でメニューを組んだら運動していない人が酷いことになるでしょう?
それと同じで、信号の変化が大きい電力回路に基準を合わせてしまうと、信号が小さなアナログ回路が酷いことになるのです。

なので、回路の性質に合わせてシグナルグランドも分けて配線し、それぞれを1点で接続することで回路間で影響を受けにくくするような手法がよく取られています。
そんな時にシグナルグランドが全く同じ記号だと混乱する為、シグナルグランドの回路記号の近くには“AGND”、“DGND”、“PGND”のような何かしらの区別をするための表示がされているのが一般的です
この例の場合、それぞれアナロググランド、デジタルグランド、パワーグランドを略したものになっています。
あくまでこの表示は一例です。
この表示方法に関しては会社によって自己ルールが設けられていることが多いので、それに従いましょう。

フレームグランド

製品の筐体を基準電位といた時のグランドのことです。
FGと略されていることがあります。
大昔にシャーシと呼ばれる金属製の箱をグランド扱いしていたことがある為、シャーシグランドとも呼ばれます。

複数の回路・基板の接地電位を共通化することを目的としていて、そのために大きな導体で比較的安定している筐体を基準とする時にこの記号を用います。

例えば、飛行機の場合は地面から浮いているのでアースを取ることは不可能です。
空中ですから当然ですよね。
なので、飛行機の場合は筐体(機体)を基準電位としていたりします。
このような例もフレームグランドと言えます。

シグナル接地

シグナルグランドを大地に接地することです。
シグナルグランド+接地=シグナル接地という単純な名称になっているわけですね。

シグナルグランドの電位をより安定させることが目的です。
シグナルグランドを接地する記号だからシグナル接地ということです。
若干ややこしいですね。

ちなみに、シグナルグランドとシグナル接地の回路記号は別々のものになっています。
また、シグナル接地とフレーム接地の回路記号はどちらも地面に繋ぐからか同じものになっています。

フレーム接地

フレームグランドを大地に接地することです。
フレームグランドを繋いで筐体を基準電位としたとしても、筐体が地面と同じ電位になっているとは限りません。
ということは、人が筐体に触れると筐体と地面の電位差によっては人体に電流が流れる、つまり普通に感電する恐れがあります
なので、感電防止のために筐体に対して接地を行う必要があり、このことをフレーム接地と呼んでいます。

シグナル接地とフレーム接地の回路記号はどちらも地面に繋ぐからか、同じものになっています。

保護接地

製品から電気が漏れた時に人体を保護することを目的とした接地です。
要は、漏電対策の接地です。
一般的にはアースと言ったら保護接地のことを指しています
保護グランドとも呼ぶようです。

直流電源などを使用する際、交流電源を供給する端子の中にPEと表示された端子がありませんか?
あれが保護接地端子(PE端子)です。
[Protective Earth]を略して“PE”です。

途中で例に挙げた電子レンジや洗濯機の接地も同様の端子が用意されていて、そこから緑と黄色が螺旋状になっている電線が延びているのです。
こうして保護接地端子-電線-地面と経由させて電気を逃がしているので、漏電対策になっているのです。

フレーム接地は電位差による感電防止、保護接地は漏電による感電防止です。
微妙に違うので注意しましょうね。

以上、「接地記号の種類」についての説明でした。