今回は、「正弦波交流のベクトル表示・フェーザ表示」についての説明です。
1.正弦波交流のベクトル表示・フェーザ表示
正弦波交流を表す方法は2種類あります。
瞬時値で表す方法とベクトル表示で表す方法です。
ベクトルとは、大きさだけでなく向き(位相)も表す量のことです。
ちなみに、ベクトル表示はフェーザ表示とも呼びます。
瞬時値で表す方法を詳しく知りたい場合は先に以下の記事をご覧ください。
瞬時値v=Vmsin(ωt+θ)という波形があります。
この波形をベクトル表示で表すと、以下のようになります。
一般的な交流は正弦波であり、角速度ωは周波数が途中で変化することは基本的に無いので一定です。
以上を踏まえてv=Vmsin(ωt+θ)の式を見ると、Vm(大きさ)とθ(位相)がわかればどのような波形なのかが予想できることがわかります。
この大きさと位相を使って正弦波交流を表した方法がベクトル表示です。
ベクトルの量記号は、文字の上に「・(ドット)」が付きます。
交流の大きさは最大値Vmよりも実効値Vの方が実用的なので、一般的には実効値で表すと覚えておきましょう。
実効値で表すと以下のようになります。
ちなみに、ベクトル表示(フェーザ表示)は、その瞬間の位相を表しているのであって、時間的な変化をする部分は取り除いた表示形式をしていますよね?
このような表示形式のことをフェーザと呼ぶので、フェーザ表示と呼ばれるようになっています。
ついでに言うと、V∠θという表示をVejθと書いてあることがあります。
どちらも指している内容は同じです。
2.ベクトル図の描き方
以下のように、ベクトル表示の「大きさ」を「線の長さ」、「位相」を「角度」で表したものをベクトル図と呼びます。
一般的には基準の方向は右方向に定めます。
ベクトル表示に慣れていない人にはわかりづらいと思いますので、実際にベクトル表示を使った問題を解いてみましょう。
2つの交流電源e1、e2が直列に繫がれています。
この時の合成電圧の大きさと位相がe1を基準にした時と比べてどう変化するかをベクトル図を用いて考えます。
まず、e1、e2をベクトル表示にします。
ここでは大きさを実効値で表していますが、最大値のままでも問題は無いです。
この式をもとにベクトル図を描くと図2のようになります。
2つのベクトルの和は、各ベクトルを2辺とする平行四辺形を描いた際の対角線となる為、Eが合成電圧を表しています。
ただ、この状態では視覚的にわかりづらいので、E1を基準にしたベクトル図にします。
このベクトル図は直角二等辺三角形になっている為、1:1:√2の関係から大きさは√2E、位相θ’はπ/4だとわかります。
合成電圧をベクトル表示にすると以下のようになります。
つまり、合成電圧の大きさはe1の√2倍で、位相はe1を基準にπ/4進んでいることがわかります。
1:1:√2の関係がわからないという方は、三平方の定理についてまず理解しましょう。
以上、「正弦波交流のベクトル表示・フェーザ表示」についての説明でした。