【基礎から学ぶ電気回路】 そもそも三相交流とは何なのか? ~単相と三相の違い~

電気電子
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

交流には単相交流と三相交流が存在します。
この内、単相交流は一般家庭のコンセントに供給されていますが、三相交流は一般家庭で見かけることはありません。
三相交流は電気系の専門性が高くなるのです。
本記事では、そんな三相交流を理解できるようになることを目的としています。

今回は、「そもそも三相交流とは何なのか」についての説明です。

1.ポイント

三相交流

3つの単相交流を組み合わせてできたものが三相交流。

正弦波交流電圧ea、eb、ec何れか1つ ⇒ 単相
正弦波交流電圧ea+eb+ec ⇒ 三相

2.直流と交流とは?単相と三相とは?

電気回路には直流回路交流回路があります。

直流(DC:Direct Current)は時間変化で極性(正負)が変化しない、交流(AC:Alternating Current)は時間変化で大きさと極性が周期的に変化するという違いがあります
交流はいわゆる正弦波状に変化します。

この交流には、単相交流三相交流というものがあります。

三相交流を学ぶ前に交流を学んでおくべきなので、不安な方は交流回路の記事から順番に目を通してください。

3.そもそも三相交流とは何なのか?

交流電源を負荷に繋いだ単純な回路と、交流電源の波形を図1に示します。

図1

このような交流波形のことを単相交流と呼びます。

それに対し、以下のような波形の位置が横軸上でズレた3つの正弦波交流電圧ea、eb、ecがあります。

図2

これらの正弦波交流電圧を式で表すと以下のようになります。

このような3つの単相交流を組み合わせてできたものが三相交流です。
つまり、単相(一相)なのか三相なのかというそのまんまの違いなんですね

どうやって三相交流回路を構成するかは別途まとめていきます。

4.なぜ三相交流を使うのか?(発電所の仕組み)

では、なぜ三相交流なんてものが存在するのか気になりませんか?
単相が3つ組み合わさったから何なんだ、と。

先に結論だけ述べると、効率的だからです

理由を説明していきますね。

三相交流を構成する各単相交流を全く同じ負荷に繋いだとした場合、各相の電流はオームの法則から電圧のグラフと相似した関係になると言えます。
もちろん、極性の向きも相似します。
そう考えると、図2を見てわかる通り、三相交流が負荷に流す瞬時値電流はどのタイミングであっても総和が0になります
つまり、帰路を1つにまとめるとその電線には電流が流れなくなります。

この特性を利用すると、普通に考えたら三相交流を送るためには各相ずつに送電用と帰路用の2本の電線(三相×2本=計6本)が必要になるのですが、うまく組み合わせることで帰路に電流が流れなくなる、つまり帰路を無くすことができます
結局どうなるのかと言うと、送電用の電線3本を用意するだけでよくなるんです。

後々説明していきますが、三相交流の回路図で帰路が描かれない理由はこれです。
問題集や教科書だとなんか突然帰路を描かなくなることがあって、帰路を描かない理由をちゃんと説明してなかったりするんですよね。

以上の特性から、発電所で作った電気を送電する時は三相交流が用いられています。
そうすれば単相交流を送電する用の電線を3本用意するだけで済みますからね。

変電所からの送電を三相交流にする理由は他にもあります。
それは、電力損失の問題です

送電線は抵抗を持っているので、電流が流れると発熱します。
電力の損失はP=VI=V2/R=RI2で表されます。
この関係から、基本的に“電圧を小さくして電流を大きくする”よりも“電圧を大きくして電流を小さくする”方が送電線での発熱による電力損失は少なくなります

その為、発電所では発電した電気を変電所で更に昇圧して数十万ボルトというレベルの高電圧にした状態で供給されていて、各地の変電所で段階的に降圧していくことでちょうど良い電圧まで引き下げるようになっています。
変圧器で簡単に電圧を変化させることができるので、そうした方が効率が良いのです。

余談ですが、ここで言う“ちょうど良い電圧”というのは、供給先と電力会社の契約によって何Vまで供給できるのか定められています。

具体的には、以下のように定められています。

契約電力供給電圧
50kW未満100V or 200V(低圧)
50kW以上2,000kW未満6,600V(高圧)
2,000kW以上特別高圧

※低圧・高圧・特別高圧の定義。(電気事業法という法律で明確に区分されている。)
低圧:AC600V以下、DC750V以下
高圧:AC600Vより上且つ7,000V以下、DC750Vより上且つ7,000V以下
特別高圧:AC7,000Vより上、DC7,000Vより上

あとは、三相交流だと単相交流が送電していない期間でも他の2相が電力を供給してくれる為、単位時間当たりに送電可能な電力が単純に3倍になるというメリットがあります
3相交流で動作するモータがあったりしますが、軒並みパワフルな製品が多いです。
これは、大きな電力を供給できるからです。

三相交流が使われる理由はこんな感じです。

5.三相交流の認知度が低い理由

ここまでは三相交流のメリットを記述してきました。
では、これだけメリットがあるのに一般的な認知度が低いのは何故でしょうか?

そもそも何故一般的な認知度が低いのか考えて欲しいのですが、身の回りの家電に三相交流を使っている製品ってありますか?
無いですよね??これが答えです。

先程説明した三相交流のメリットを簡単にまとめると、「大電力を効率的に3本の電線で送電できる」です。
逆に言うと、大電力を送電するわけではないならそこまで効率的ではないのです

そもそも、単相交流を使用したのなら送電線は3本も必要無いですからね。
単相交流と比べると、三相交流は配線コストがかかりますし、回路も複雑になってしまうわけです。
なので、動作させる対象がどの程度の電力を必要としているかで、三相交流と単相交流のどちらの方が適しているのかが変わります。

では、三相交流が適している“大電力が必要な電気機器”とはどのようなものなのかと言うと、工場に置いてあるようなゴツい機械が対象になります。
つまり、一般家庭で使用するような家電製品には大電力が不要なんです
だから、家庭用コンセントには単相交流であるAC100Vが供給されています。
そもそも一般家庭に三相交流なんて来ていないんです。
家庭向けで考えた場合、コスト面やら何やらを考慮すると、単相交流の方が効率的になるのです。

こうした理由で一般人が三相交流を見かける機会が存在しない為、一般的な認知度が低いのです。
身の回りに存在しないんですから当然ですね。

以上、「そもそも三相交流とは何なのか」についての説明でした。