今回は、「対称三相交流回路の一相が断線した場合の電流・電圧の変化」についての説明です。
1.対称三相交流回路の一相が断線した場合の電流の変化
状況がかなり限定的ですが、今回は対称三相交流回路の一相が断線した場合の電流・電圧の変化について考えていきます。
まずは電流です。
図1のような対称三相平衡回路があったとして、c相が×印の箇所で断線してしまったとします。
断線前後で電源の大きさや位相は変化しないものとします。
この時の相電流は断線前後でどう変化するのか求めてみます。
断線前の相電流をI、断線後の相電流をI’とおきます。
まず、断線前の相電流Iから考えていきます。
断線前の考え方に関しては、「対称三相電圧と平衡負荷の間に負荷がある場合の考え方」の焼き回しになるので、説明は大幅に省略させていただきます。
Δ回路のままだと計算ができないので、Δ-Y変換を行います。
Vab、Vbc、Vcaは線間電圧なので、相電圧は線間電圧の1/√3になるという関係から、V/√3になります。
以上の関係から単相を取り出して考えてみると、相電流=相電圧÷合成抵抗=(V/√3)÷(4R/3)=√3V/4Rになります。
ここで求めた相電流は、Y結線にした場合の相電流であって、変換前のΔ結線の相電流ではありません。
Y結線の相電流はY結線の線電流と同じです。
線電流はY結線もΔ結線も同じになります。
そして、Δ結線の線電流はΔ結線の相電流の√3倍になります。
つまり、Δ結線の相電流Iは(√3V/4R)÷√3=V/4Rとなります。
次に、断線後の相電流I’について考えていきます。
c相が断線するとどうなるのかというと、Vbc及びVcaが機能しなくなります。
つまり、図3のような単相の回路になります。
なので、I’は以下のように求めることが可能です。
並列回路部分の合成抵抗(2R/3になる)を求める。
→回路全体の合成抵抗(8R/3になる)を求める。
→回路全体に流れる電流(3V/8Rになる)を求める。
→並列回路で分流されるのでI’はV/8Rとなる。
つまり、断線前(I=V/4R)に対して断線後(I’=V/8R)は半分の電流になっていることがわかります。
2.対称三相交流回路の一相が断線した場合の電圧の変化
次は、電圧について考えてみます。
断線された×印の両端に現れる電圧V’が線間電圧Vに対してどの程度の大きさになっているのか求めてみましょう。
端子a,b,cが存在するので、結構混乱するであろう内容となっています。
私も最初は『そこって電位差あるの?』状態でしたからね。
まず、そもそも断線前のVab・Vbc・Vcaの関係は図4のようになっています。
三相交流の位相差は各120°なのでここまでは良いですよね?
×印が断線しているということはVabしか機能していないということなので、回路は図3のようになっていました。
この時の点xの電圧は、Vab/2になります。
つまり、ベクトルも加味すると図6のようにVabの中点に点xが位置するわけです。
×印の両端の電圧とは、x-c間の電圧Vcxのことですよね。
なので、Vcx=√3V/2≒0.87V程度になっていることがわかります。
うん、ややこしい。
以上、「対称三相交流回路の一相が断線した場合の電流・電圧の変化」についての説明でした。