今回は、「リプル電流」についての説明です。
1.リプル電流とは?
リプル電流とは、ノイズ吸収用に配置したコンデンサに流れる電流のことです。
名称通り、リプル/リップル[ripple(脈動)]している電流です。
電解コンデンサと密接な関係があり、電解コンデンサのデータシートを眺めていると唐突に出現します。
電気信号には一切のノイズが無いのが理想的ですが、実際はそうも行きません。
スイッチのON/OFFや外的要因などで信号ラインにノイズが載ってくるというのはよくある話です。
そんなノイズを取り除くためにコンデンサを配置することはよくあることで、そのコンデンサに流れる電流をリプル電流と呼ぶわけです。
電解コンデンサにおけるリプル電流は“定格”リプル電流もしくは“許容”リプル電流を指しています。
簡単に言うと、『この電解コンデンサにこのリプル電流以上を流すとまずいよ』という値を示しています。
どうまずいのかと言うと、電解コンデンサが発熱するので温度特性的にまずくなります。
その為、電解コンデンサのデータシートにおいては、リプル電流が高いほど許容電流が大きい(性能が良い)ということになります。
リプル電流とは何なのか知らないと、名称から電解コンデンサが発生させる余分な電流か何かと勘違いし兼ねないので注意しましょうね。
電解コンデンサとリプル電流には密接な関係があると述べましたが、厳密には普通のセラミックコンデンサにも関係しています。
まあ、セラミックコンデンサもノイズを吸収するので当たり前ですよね。
ただ、セラミックコンデンサのデータシートにはリプル電流が載っていません。
何故かと言うと、電解コンデンサと比べてセラミックコンデンサは発熱が抑えられるからです。
つまり、セラミックコンデンサではリプル電流を気にするレベルで発熱することは無いから、わざわざリプル電流をデータシートに載せる必要が無いのです。
ちなみに、電解コンデンサのリプル電流は周波数が100kHzもしくは120kHzの時の実効値で規定されているのですが、後述のESRが周波数特性を持っているので、周波数ごとに実際に許容可能なリプル電流の上限は変動します。
データシートに載っているのはあくまで目安なので、定格ギリギリで使用する場合は周波数を考慮してちゃんと計算する必要が出てくることを覚えておきましょう。
計算したくないなら余裕を持った種類を選定しましょうね。
2.ESRとESL
そもそもなんでコンデンサが発熱するのかというと、実際のコンデンサには抵抗成分やインダクタ成分が存在するからです。
過去の記事でも何度か触れている内容ですが、改めて説明します。
コンデンサが実際に一つ存在している場合、R(抵抗)-L(インダクタ)-C(コンデンサ)が直列に繋がっている回路が等価回路に値します。
この時の抵抗をESR、インダクタをESLと呼びます。
P=RI2なので、ESRが大きいほど発熱量が上がります。
また、周波数が高くなるほどESLのインピーダンスは上昇していく為、共振周波数を超える周波数になるとどんどんインピーダンスが増加していくことになります。
※ コンデンサのインピーダンス-周波数特性を図示すると以下のような形状になります。
まとめると、ESRが大きいとそれだけ発熱してしまい、ESLが大きいと波形が乱れやすくなります。
つまり、性能の良いコンデンサはESR・ESL共に小さくなっているということです。
先程セラミックコンデンサは発熱が抑えられると述べたのは、ESRの特性が優秀だからです。
3.リプル電流印加時の消費電力の考え方
実際に計算する機会はほぼ無いかと思いますが、一応どのように消費電力(発熱量)を計算するのかを簡単に記述しておきます。
リプル電流印加時の消費電力は以下の式で表されます。
P=IR2R+VIL≒IR2R
P…消費電力[W]
IR…リプル電流[A]
R…ESR[Ω]
V…印加電圧(直流電圧)[V]
IL…漏れ電流[A](絶縁体内部のような本来流れない箇所に流れてしまう電流のこと)
リプル電流に対して漏れ電流は非常に小さいので、ほぼ0とみなすことが可能です。
ここから温度補正や周波数特性について考えていく必要があります。
以上、「リプル電流」についての説明でした。