今回は、「リレー」についての説明です。
1.リレーとは?
リレーとは、接点のON/OFFを切り替えて電気回路の接続状態を切り替える部品のことです。
機能的にはスイッチと同じです。
リレーはコイルと接点で構成されています。
スイッチは接点を物理的に動かしますが、リレーは電流をコイルに流して励磁することにより電磁石の力によって接点を切り替えます。
※電磁石:電流が流れている時に磁石になる物体。(鉄心のまわりにコイルを巻いたものなどが該当)
図1のような回路があります。
赤枠で囲まれた部分がリレーです。
図1左ではスイッチをOFFしているのでコイルに電流が流れていません。
この時は接点が開いた状態になっているので負荷に電流が流れません。
図1右ではスイッチをONしているのでコイルに電流が流れます。
先程述べたように、電流が流れるとコイルは電磁石になるので、接点が引き寄せられます。
すると、負荷側の回路が閉じて、負荷に電流が流れるようになります。
ここでスイッチをOFFすると、コイルが電磁石ではなくなるので接点が元の位置に戻ります。
また、図1を見てわかる通り、コイルと接点は絶縁されています。
その為、コイル側と接点側の間で電流の回り込みやノイズの影響は無くなります。
その代わり、コイル側と接点側の両方に電源が必要になります。
コイルの動作用電源はAC100Vから取っているけど接点部はDC3.3Vの信号が通っているといった使い方をしても問題ありません。
DC24V駆動・DC48V駆動・AC100V駆動などタイプは多々ある為、使用時はデータシートをよく見ましょう。
一般的なリレーの動作イメージはこんな感じです。
言葉でわかりづらい場合は実際に動かしてみるといいですよ?
ガワが透明なリレー(OMRON製のMY2Nシリーズなど)のリレーを動作させると、『バチンッ』という音と共に接点が動く様が見れます。
ちなみに、ソリッドステートリレーという半導体のスイッチングを利用した無接点リレーなんかも存在します。
高速動作を求める場合はこのリレーが用いられてたりします。
2.可動接点と固定接点(COM端子・NO端子・NC端子)
リレーは、コイルが電磁石になることで接点が切り替わるという話をしました。
この接点の切り替わりですが、動く接点と動かない接点があります。
前者は可動接点、後者を固定接点と呼びます。
可動接点はCOM端子、固定接点はNO端子・NC端子と呼ばれ、図示すると以下のようになります。
COM端子
⇒Common。「一般・通常・同じ」と言った意味なので、固定接点のNO端子及びNC端子に共通する端子という意味合い。
NO端子
⇒Normaly Open。「通常は開いている」。つまり、通常時はCOM端子と繋がっていない固定接点。
NC端子
⇒Normaly Close。「通常は閉まっている」。つまり、通常時はCOM端子と繋がっている固定接点。
リレーにはCOM端子は必ずありますが、接点の種類によってはNO端子かNC端子のどちらかが存在しない場合もあります。
3.接点の種類(a接点・b接点・c接点)
接点には、a接点・b接点・c接点という種類があります。
リレーは複数の接点を持っている場合があります。
呼び方のルールは単純で、a接点を1つ持つ場合は1a接点、a接点を2つ持つ場合は2a接点という具合になります。
若干特殊なのはa接点とb接点が1つずつある場合で、この場合は1a1b接点となります。
c接点の方が構成が複雑になるからなのか、a接点・b接点に比べてサイズが大きいものが多いイメージです。
ちなみに、接点の個数は極数と呼ぶため、2極と書かれていたら2接点あるのだと考えましょう。
4.リレーの選び方
実際にリレーを使用する場合、用途によってリレーを選択する必要があります。
簡単なところでいうと、以下のような点を考慮する必要があります。
- 何Vの電源でリレーを動作させたいか。
- 何接点が必要か。接点はいくつ必要か。
- リレー接点にかかる電圧・流れる電流はどの程度か。
これらの内容はリレーのデータシートを見れば詳しく記載されています。
実際にデータシートを見てみたい場合は、RSなどの通販サイトでリレーを探してみましょう。
大体データシートが見れるようになっています。
1.何Vの電源でリレーを動作させたいか。
リレーはコイルに電流を流すことで接点が切り替わるという話をしました。
その為、コイルに電流を流すための電源が必要となるわけですが、リレーの種類によってコイルにかける電圧が異なります。
このコイルに加える基準となる電圧を定格電圧と呼びます。
直流電源であるDC12V・DC24V・D48Vに対応しているものや、AC100V・AC200Vに対応したものなどがあります。
前述の通りコイルと接点は絶縁されている為、コイルをAC100V電源で駆動させて、接点にはDC24V電源が繋がっていても問題なく動作します。
この点は便利ですね。
では、DC24Vに対応したリレーを使用してみようと考えたとします。
ですが、手元にあるDC24V電源は厳密にはDC22Vしかなかったとします。
この場合、リレーは正常に動作するのか心配になるかと思います。
そんな時は、データシートのコイルの定格を調べてください。
どこかしらに以下のような表があるはずです。 ※レイアウトは同じとは限りません。
ここで注目すべき点は動作電圧と最大許容電圧です。
簡単に言えば、動作電圧以上最大許容電圧以下の範囲でリレーが動作可能ということです。
この例の場合、動作電圧が80%以下、最大許容電圧が110%となっているので、DC24V対応のリレーを動作させるには、DC19.2V~26.4Vの電圧が必要だとわかります。
なので、DC22Vでも普通に動作します。
定格電圧に気を付けておけば自ずと定格電流も満足する為、少なくとも定格電圧の確認は行うようにしましょう。
ちなみに、電圧が低すぎるとコイルに発生する磁力が弱まって満足に接点が切り替わらなくなったり、電圧が高すぎるとリレーが焼損する要因となります。
※ 動作電圧・最大許容電圧・復帰電圧の補足説明です。
動作電圧
⇒リレーが動作するのに必要な電圧。「80%以下」となっていたら、80%に電圧が上昇するまでにリレーが動作するということ。
最大許容電圧
⇒リレーを安全に使用するための電圧の許容値。瞬時値で超えてもアウト。
復帰電圧
⇒動作しているリレーの接点が元の位置に戻る(復帰する)電圧。「30%以上」となっていたら、30%に電圧が減少するまでにリレーの接点が元の位置に戻るということ。
2.何接点が必要か。接点はいくつ必要か。
接点の種類はa接点・b接点・c接点があると説明しました。
ON/OFFの切替が目的ならa接点・b接点で事足りますし、経路の切替を目的とするならc接点もしくは1a1b接点なんかでも対応可能です。
これらの接点のリレーは、普通に調べれば出てきます。
どういうことかと言うと、c接点が2つ搭載されたリレーを使用したいと思ったら、「リレー 2c」と検索すればヒットします。
なので、接点に関してはデータシートを見るまでもなく種類が判別可能です。
定格電圧・定格電流の類いを確認しなければいけないので結局データシートは見るんですけどね。
接点の数は、1~4極あります。
接点の個数を極数と呼んでたりするので、2極と書いてあったら2接点を示しているということです。
これらの接点は同時に動作するので、別々に動作させたい場合は1c接点のリレーを複数用意するなど工夫が必要になります。
3.リレー接点にかかる電圧・流れる電流はどの程度か。
コイルと接点は絶縁されている為、互いの定格電圧は異なります。
なので、接点に繋いでいる回路にどの程度の電圧がかかり、どの程度の電流が流れるのかを確認する必要があります。
接点の定格もデータシートに載っているので、しっかりと確認しておきましょう。
見てわかる通り、接点には結構大きな電圧・電流がかかっても大丈夫です。
ただ、リレーは消耗品なので、最大値付近での使用はなるべく控えた方が良いのは確かです。
以上のように、情報は調べればいくらでも出てくるので、リレーの選定時はデータシートをよく読むようにしましょう。
あとは、「リレーを頻繁に動作させるので定期的にリレーを交換することを視野に入れる」といった場合はソケットのあり/無しも考慮しておくと良いですね。
ソケットに関しては次の項で説明します。
5.実際の接続方法
実際にどう接続すれば良いかについて触れていきます。
例として、OMRON社製の「MY2N DC24V」というリレーについて考えてみます。
データシートを眺めていると、図7のような外形とピン配列がわかるページがあります。
今例として挙げているのはDC24Vなので、DC仕様の方ですね。
図7でいうDC仕様のようにコイルに極性があるので注意するように一文が書かれていることもあれば、AC仕様のようにコイルに極性がないので±を意識する必要が無いこともあります。
一般的なリレーに極性はありませんが、リレーが動作していることを知らせるためのLEDが内蔵されている動作表示灯内蔵タイプのリレーには極性があります。
LEDは光るダイオードなので、アノードからカソードに電流が流れないと光ってくれないというだけの話です。
図7を見てわかる通り、1・4ピンがNC端子、5・8ピンがNO端子、9・12ピンがCOM端子、13ピンが電源のGND側、14ピンが電源の24V側という扱いになります。
ただ単にリレーを動かしてみたい場合は図8の接続で充分です。
電源ONと同時に接点が切り替わる様を見ることができます。
ただ、この繋ぎだと電源をONした時点で接点が切り替わったままとなるので、間に手動のスイッチを挟んだり、13ピンにPLCのDO(NPN)を繋いで任意のタイミングでリレーを動作させるようにするなど色々接続の仕方はあります。
リレーのピン配列は実物のリレーの裏側(端子のある面)を見ると書いてありますので、データシートと見比べながら配線しましょう。
リレーの取り付け方法はいくつかありますので、代表的な方法を何点か挙げます。
1.プリント基板に直接取り付ける。
プリント基板に直接はんだ付けする方法です。
リレーの端子の位置に合わせた穴を用意してパターン設計したプリント基板に直接はんだ付けするか、表面実装タイプのリレーを載せれるようにパターン設計する必要があります。
直接はんだ付けするのでリレーが壊れた場合に交換が困難になるので、メンテナンス性は悪いです。
ですが、基板の配置方法によっては後述のソケットに取り付けると頻繁に接触不良を起こすこともある(※実体験)ので、場合によっては直接取り付けた方が良いです。
ちなみに、Panasonic製の「AGN20024」という表面実装タイプのリレーは、うまく捻じるとパターンを傷つけないでリレーを剥がすことができます。
失敗するとパターン剥がれますけどね。
2.ソケットに取り付ける。
リレーの種類によっては、そのリレーをはめ込むことができるソケットというケースが用意されています。
ソケットがあるとプリント基板への取り付け自体はソケットで完結する為、リレーの着脱が容易になり、メンテナンス性が向上します。
ただ、結合が強固で簡単にリレーの着脱ができない種類のものも存在する為、使用する前に実際に具合を確かめた方が無難です。
ちなみに、ソケットに対応しているリレーはプラグイン端子のリレーと呼ばれています。
3.端子台に取り付ける。
ソケットはプリント基板に実装するという話をしましたが、端子台として個で存在できるものもあります。
こちらの場合、ソケットをねじ止めしたり、DINレール(産業用制御機器の取り付けなどに広く使用されている標準タイプの金属レール)に取り付けたりできます。
その為、ちょっとしたスペースに置くことが可能で使い勝手は良いです。
配線はねじ端子で留めるタイプや電線を挿し込むタイプなどがあります。
ここまではリレーを動かすための配線及び取り付け方法の話でした。
次に、リレーのコイルの逆起電力(サージ電圧)の対策の話をします。
原理を理解するには磁気に関する知識が必要なので、本ブログにまとめる予定の【基礎から学ぶコイル】の項目に目を通すと理解がしやすいかもしれません。
リレーを動作させるためにコイルに電流を流すと磁界が発生します。
この時、コイルには磁気エネルギーが蓄えられています。
リレーを動作させるのを止めるとコイルに電流が流れなくなる為、磁界がなくなります。
磁界がなくなるということは磁界が変化するということなので、コイルに逆起電力が発生し、蓄えられたエネルギーが放出されます。
この逆起電力はコイルの巻き数に比例する為、場合によっては1000Vを超える大電圧が発生し、リレーのコイルを制御する入力機器の接点や電気回路を破壊する恐れがあり、故障や誤動作の原因となります。
その為、逆起電力を吸収する為の素子が必要になります。
ではどうするかというと、DC電源の場合はコイルと並列にダイオードを接続します。
このダイオードは、印加電圧とは逆向きに取り付けます。
そうすることで、逆起電力が発生しても電流はダイオードに流れるようになり、入力機器は保護されるようになります。
AC電源の場合はCR回路(フィルタ)を並列に接続します。
電源の他にも以下のような感じに回路を接続しましょうね、ということです。
よくわからないという方は、ダイオード内蔵型やCR回路内蔵型のリレーを使用しておけば問題ないです。
例として挙げている「MY2N」のシリーズのリレーにはダイオード内蔵型やCR回路内蔵型が存在する為、初心者(?)にはおすすめです。
コイルには逆起電力が発生するということは(発生原理はともかく)理解してくれたと思います。
ということは、リレーの接点に繋ぐ回路にコイル(モータなど)が繋がっている場合にも逆起電力は発生します。
なので、リレーの接点にコイルを含む製品を接続する場合は、接点の定格に気を付けて余裕を持った値のものを使用するように心掛けましょう。
以上、「リレー」についての説明でした。