【基礎から学ぶ電線】 ケーブルとプラスチックの難燃グレード ~VW-1とV-0は何が違うのか?~

電気電子
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パソコンを使用する時は電源ケーブル、スマートフォンを充電する時は充電ケーブルを何気なくコンセントに挿しますよね?
身の周りには、何気なく使用している電線が無数に存在します。
本記事では、そんな電線の区分・種類や概要についてわかりやすく説明していけたらと思います。

今回は、「ケーブルとプラスチックの難燃グレード」についての説明です。

1.初めに

ケーブルは、様々な環境・条件で使用されます。
屋内で大して電流が流れないような用途もあれば、屋外で自然に曝されて大電圧がかかっているような用途もあります。
その用途によって、耐電圧・吸水性・耐腐食性・耐薬品性などに優れた種類の電線を選択する必要があります。
前者は細くて脆いケーブルでも良さそうですが、後者は太くて丈夫なケーブルが必要になりそうでしょう?
何でもかんでも優れている電線を選べば間違いないですが、性能が高いとそれだけコストがかかります。
だから、必要充分な性能を持ったケーブルを選択し、コストを抑える考えは基本なのです。

そんな性能の中でも、ほぼ必ずと言って良いほどデータシートに記載されている情報があります。
それは、難燃性です。
難燃性と言っても、そもそも燃えない不燃性熱源から離れると火が消える自己消化性火がついても燃焼速度は遅い遅燃性など、その方向性は多岐に渡りますけどね。

この難燃性ですが、データシート上では「VW-1」といった文字列が記載されています。
予備知識無しでこの表記を見ても、何を指しているのかわかりませんよね。
この表示は、難燃性のグレードです。

今回は、線材の難燃グレードの種類と、混同しやすい一般的な材料の難燃グレードについて説明していきます。

2.ケーブルの難燃グレード

ケーブルの難燃グレードとしてよく使われている表現は「VW-1」です。

VW-1はUL規格(UL224規格)及びCSA規格で規定された難燃グレードです。
なので、「UL VW-1」のように記載されている場合もあります。

垂直難燃試験に合格した製品のみが認定を受けることが可能で、試験内容は「ワイヤをチューブに挿入し、垂直に保持した状態で燃焼させた時、1分間以内に消炎すること」とされています。
火災が起きたとしても、1分間以内に自動的に火が消える材料を使用しているわけです。

また、垂直[Vertical]なワイヤ[Wire]を1分間燃焼させても大丈夫なので、VW-1という名称になっています。
要するに、難燃性の欄にVW-1と記載されていた場合、『特定の試験(上記の内容)を耐える程度の難燃性は持っているよ』と述べているわけです。

最初に難燃グレードとしてよく使われている表現がVW-1と述べましたが、実際にVW-1以外の表現方法も存在します。
「IEC 60332-3」とか「JIS C 3665-1」とか、調べれば多々出てきます。
これらの難燃グレードは、共通した特定の試験方法が決まっているわけではありません
UL規格・IEC規格・JIS規格など、それぞれの規格で定められた試験方法に則っています。
だからこそ、VW-1という表示が多いのでしょうね。
難燃グレードの表記によって試験方法も難燃性も変わってくるなら、充分な難燃性を持った1つの規格をなるべく使用した方がわかりやすいでしょう?

ちなみに、熱収縮チューブの難燃性に関してもこのVW-1というグレードを用いられています。

3.プラスチック材料の難燃グレード

ある難燃グレードに「V-0」というものが存在します。
この表記を見てどう思いますか?
VW-1の仲間か何かと勘違いする人もいるかと思います。
プリント基板の難燃グレードであるFRグレードくらい名称が異なっていれば混同はしないでしょうけど、名称がそこそこ似ていますからね。
実際、束線メーカのQ&Aで『VW-1とV-0では何が違うの?』という質問がされていることはあるので、違いがよくわからないという人は少なくないのでしょう。

V-0とは、プラスチック材料の難燃グレードの1つです。
ケーブルの絶縁被覆もプラスチック材料なので、勘違いに拍車をかけている感がありますね。

VW-1はUL224規格、V-0はUL94規格と、どちらもUL規格に準拠している点もややこしいです。
何かと似ていますが、VW-1はチューブ状の製品に対する難燃性を評価V-0の場合はシート状にした試料で難燃性を評価しますので、実際は全くの別物です。

プラスチック材料の難燃グレードは、5VA・5VB・V-0・V-1・V-2・HBの6段階存在します。
この並びで左に行くほど難燃性に優れていて、右に行くほど難燃性で劣っています

それぞれのグレードの特徴を簡単に補足説明していきます。

5VA・5VB

試験片を垂直に配置する場合と、水平に配置する場合の2パターン試験する。

①短冊状の試験片(長さ125±5mm×幅13±0.5mm)を垂直に保持し、下端に長さ125mmの炎を5秒間接炎させ、5秒間離す。この操作を5回繰り返す。
②平板状の試験片(長さ150±5mm×幅150±5mm)を水平に保持し、下方から長さ125mmの炎を5秒間接炎させ、5秒間離す。
この操作を5回繰り返す。

この試験を行った際の判定基準は以下のようになっています。

表1

ということで、5VAと5VBの違いは、平板状試験片の試験による穴の有無となります。

代表的な材料は調べてもほとんど出て来ないです。
特注生産が可能なメーカはあるようなので、後述のV-0グレードで事足りる場合が多いのかもしれませんね。

V-0・V-1・V-2

試験片(長さ125±5mm×幅13±0.5mm)を垂直に保持し、下端に長さ20mmの炎を10秒間接炎させる。
燃焼が30秒以内に収まった場合、更に10秒追加で接炎させる。

この試験を行った際の判定基準は以下のようになっています。

表2

5VA/5VBの試験と比較すると、接炎する炎の大きさがグッと小さくなってますね。

代表的な材料としては、V-0はPEX(架橋ポリエチレン)V-1はPPO(ポリフェニレンオキサイド)V-2はPA(ポリアミド)などが挙げられます。

HB

試験片(長さ125±5mm×幅13±0.5mm)の一方の端を固定して水平に保持し、もう片方の端部に長さ20mmの炎を30秒間接炎させる。
炎を離した後も試験片が燃焼を続けた場合、燃焼速度により判定を行う。

判定は、試験片の厚みによって変化します。

表3

ここまで説明した難燃グレードでは燃焼しても最終的に消炎する前提で判定基準が設けられていましたが、HBに関しては消炎しません。
自己消化性が無いわけですね。
その為、1分間(1min)当たりにどの程度の速度で試験片が燃焼したのかを判定基準としているわけです。

代表的な材料としては、PMMA(アクリル)・PE(ポリエチレン)・PET(ポリエチレンテレフタレート)などが挙げられます。

プラスチック材料の難燃グレードは上記の通りです。
グレードごとにそもそも試験方法が異なるんですね。

性能を簡単にまとめると、以下のようになりますので、イメージとしてはこれだけ抑えておけば良いかと思います。
別に自分で試験をやるわけでもないですし。

図1

ちなみに、一般的にはVW-1はV-0相当の難燃性を有していると言われています。

以上、「ケーブルとプラスチックの難燃グレード」についての説明でした。