今回は、「暗電流」についての説明です。
1.暗電流とは?
物質に光を照射した際に電子が飛び出る現象を光電効果と呼びました。
この光電効果を利用することで光を照射すると電流が流れる(光エネルギーを電気エネルギーに変換する)、いわゆる受光素子が作られています。
電子が飛び出す=電流が流れることに等しいですからね。
なので、受光素子に光を照射した場合に電流が流れるのですが、実際のところ光を照射していなくても若干電流が流れてしまいます。
この電流のことを暗電流と呼びます。
暗電流が大きいと、光が照射されているかされていないかの判定に影響が出ます。
暗電流のせいで光が照射されていないのに照射されたと誤判定されてはたまらないですからね。
暗電流がノイズになってしまうわけです。
なので、受光素子の検出可能な最低値は暗電流に依存します。
その為、暗電流は小さいに越したことはないのです。
ちなみに、ここでは光電素子の観点でいう暗電流の話をしていますが、エンジンをOFFした自動車のバッテリーに流れる電流のことも暗電流と呼びます。
こちらは車載のECUなどをリセットせずに維持するための待機電力扱いなので、光電素子でいうところの暗電流とはまた違うものと考える必要があります。
別途まとめてあるので気になる方は以下の記事も参考にしてみてください。
2.暗電流が流れる理由
暗電流は、ダイオードの逆バイアス時の電流のことです。
ダイオードの電圧-電流特性のグラフを思い出すと、アバランシェ降伏をする直前まで微妙に電流が流れるようになっていませんでしたか?
あれが暗電流です。
ダイオードの動作原理に詳しくない場合は、まず以下の記事を読んでみてください。
では、そもそもなぜ暗電流が流れるのでしょうか?
要因は以下の2つです。
①拡散電流
②表面リーク電流
それぞれ補足説明をしていきますね。
pn接合ダイオードに逆バイアスをかけると、接合面付近の空乏層は広がります。

空乏層はキャリアの存在しない領域のことですが、空乏層となる前はp型半導体かn型半導体でした。
つまり、空乏層になる前のp型半導体部分からは正孔、n型半導体部分からは電子が居なくなってしまいます。
なので、空乏層のp型半導体部分は正孔が無くなって-に帯電し、空乏層のn型半導体部分は電子が無くなって+に帯電し、空乏層内部に電界が発生します。
p型半導体とn型半導体はキャリアが正孔か電子に偏っています。
実は、“偏っている”であって“多数キャリア100%”ではありません。
少数キャリアも少ないながら存在しています。
この少数キャリアが空乏層にかかっている電界によって空乏層内を移動してしまうので、微小な電流が流れてしまうという仕組みです。
ちなみに、多数キャリアが100%というのは理想的な話でしかないので、どう頑張っても拡散電流を“0”にすることはできません。
温度の増加に比例して拡散電流が増えていくので、なるべく拡散電流を無くせるよう、たまには冷却する必要があります。
※ 表面リーク電流の説明は、半導体についてものすごく詳しくないと意味がわからないです。なので、大分噛み砕いた簡単な説明だけ記載します。
受光素子はp型半導体とn型半導体で構成されており、表面には電極が取り付けられています。
この半導体の表面を絶縁体(表面保護膜)で覆っています。
なので、構造上半導体と絶縁体が接する箇所が存在するのですが、その接触面では半導体結晶の原子の並びが乱れています。
半導体を受光素子の形に成形する際に端部の結晶が綺麗な並びのままにできるわけないですからね。
一見綺麗に見えても電子顕微鏡で観察するとガタガタになっているものです。
このように、原子の並びが乱れていると、その乱れに電子が捕らわれやすくなるそうです。
この捕らわれた電子は簡単に移動できる状態なので、この電子の動きにより電流が流れてしまいます。
これが表面リーク電流です。
つまり、保護膜表面・半導体表面でリークした(漏れた)電流ということですね。
上記のような原理で暗電流というものが流れるわけです。
あまり理解できなかった場合は、『とりあえず逆バイアスすると暗電流という意図していない電流が流れてしまう』という部分だけでも覚えておきましょう。
別に原理まで理解できてなくても問題ないですからね。
以上、「暗電流」についての説明でした。