今回は、「コンデンサの特性(tanδや周波数特性)」についての説明です。
1.温度特性
コンデンサの静電容量は、使用温度によって変化します。
この変化幅が小さいほど安定した容量を得られるので、温度特性は良好という扱いになります。
温度特性はコンデンサの種類ごとに以下のように分かれています。
※ 一例です。
《温度特性◎》
・温度補償用積層セラミックコンデンサ
・フィルムコンデンサ
・アルミ電解コンデンサ
《温度特性✕》
・高誘導率系積層セラミックコンデンサ
・タンタル電解コンデンサ
セラミックコンデンサに関しては、公的な規格でClass1(温度補償用積層セラミックコンデンサ/低誘電率系積層セラミックコンデンサ)、Class2(高誘電率系積層セラミックコンデンサ)と分類されています。
Class1とClass2の具体的な違いはまたの機会に説明します。
2.tanδ
コンデンサのデータシートを眺めていると、唐突に「tanδ」や「損失角の正接」というものが出てきます。
これらが何を表しているのか説明していきます。
理想的なコンデンサの場合、電力を消費することはありません。
電力を消費するのは抵抗成分を持つ場合ですからね。
なのですが、実際のコンデンサは普通に発熱します。
電力を消費しないのに発熱するって変ですよね?
では何故発熱するのかと言うと、実際のコンデンサには抵抗成分(ESRと言う)やインダクタ成分(ESLと言う)が存在するからです。
ESRは、等価直列抵抗[Equivalent Series Resistance]のことです。
ESLは、等価直列インダクタンス[Equivalent Series Inductance]なので略すとESIになってしまうのですが、実際はESLという呼び名になっています。
これは、インダクタンスの量記号であるLが由来だと言われています。
普通、コンデンサと言えば静電容量が存在しますよね?
学校で勉強する際にはこの静電容量しか考慮しないのですが、実物はESRとESLを含んでいるんですよ。
よくある理想的な電子部品と実際の電子部品の違いというヤツです。
このESRのせいで電力が消費されてしまうのです。
コンデンサに加わる電圧と電流の位相の関係は、電圧に対して電流の位相は90°進むようになっているのですが、ESRのせいでズレが生じます。
厳密には電流の位相が若干遅れてしまいます。
この遅れの角度を損失角と言い、δ(デルタ)で表します。
この損失角の正接だからtanδという形でデータシートに載っているわけです。
※ tan=正接。
また、tanδの逆数をQと言い、Qのことを品質係数と呼びます。
データシートに必ず載っているのはtanδだけですけどね。
tanδ=ESR[Ω]/コンデンサのリアクタンス[Ω]なので、tanδが小さいほど損失が少なくなります。
tanδは小さければ小さいほど性能が良くなると覚えておきましょう。
ちなみに、ESRもESLもどちらもコンデンサの性能を低下させる要因にしかならないのですが、完全に無くすことはできないというジレンマがあります。
3.インピーダンス-周波数特性
tanδの説明で実際のコンデンサにはESRという抵抗成分と、ESLというインダクタ成分が存在すると述べました。
つまり、コンデンサのインピーダンスはR+jωL+1/jωCになります。
理想的なコンデンサの場合はインピーダンス成分が1/jωCしかないので、周波数が高くなるほどインピーダンスは小さくなっていきます。
(ω=2πfより)
しかし、ESLが存在すると話は変わります。
jωLの部分がどんどん大きくなっていってしまいますからね。
コンデンサのインピーダンス-周波数特性を図示すると以下のような形状になります。
V字型になって、底になる部分が共振周波数(ちょうど虚数成分が打ち消し合う状態のこと)です。
実際のコンデンサは、この点を境に左側の周波数帯域ではコンデンサとして動作するのですが、右側の周波数帯域ではコンデンサとしての性質を失ってインダクタとして動作するようになってしまいます。
その為、コンデンサは共振周波数より低い周波数帯域で使用する必要があります。
では、より高い周波数帯域でコンデンサを使用するにはどうすれば良いのでしょうか?
単純に考えると、共振周波数を大きくすれば良いですよね。
では、共振周波数を大きくするにはどうすれば良いのかと言うと、ESLを小さくすれば良いのです。
つまり、ESLが小さければ小さいほどコンデンサは高性能だと言えます。
ESRもESLもコンデンサにとっては邪魔者でしかないのです。
以上、「コンデンサの特性(tanδや周波数特性)」についての説明でした。