今回は、「受配電機器」についての説明です。
1.初めに
短絡・漏電・地絡…電気に関するトラブルは結構身近に潜んでいます。
濡れた手でドライヤーを使って感電死、スマートフォンを充電しながら入浴して感電死、電信柱の工事中に作業員が感電死…こういった内容は普通にニュースになりますからね。
生活する上でも当たり前に電気のトラブルがあるわけですが、電気設備においては発生しないと思いますか?
答えはNOです。
ただ、しっかりと対策を設けているので、一般人が引き起こす事故よりも大事にならないことが多いです。
そんな電気トラブル対策の肝となっているのが受配電機器です。
今回は、受配電機器とは何なのか、どういった電気トラブルの対策がされているのかなどをまとめてみました。
※短絡・漏電・地絡についてよくわかっていない場合は、以下の記事も見ておくと良いかもしれません。
2.受配電機器の立ち位置
受配電機器は、高圧受電設備や低圧盤の中に設置されています。
高圧受電設備とは、その名の通り高圧を取り扱っている受電設備です。
前回の記事では家庭に送られる電気の仕組みについて解説していましたが、そういった用途ではなく大規模な工場などの使用電力が大きい施設向けに設置されている装置です。
家庭の電気はいくつもの変電所を経由してきていますが、その途中の高電圧の状態で電気を受け取る設備となります。
前回の記事にて、低圧は契約電力が50kW未満のものと定義されていると述べました。
なので、高圧受電設備は50kW以上の設備となります。
低圧盤は、大規模工場においては高圧受電設備で下げられた電圧を次に受け取る装置になります。
中には分電盤・制御盤・監視盤など、色々なモノが入っています。
この低圧盤からコントローラ・モータ・照明といった負荷に繋がるという構成になっています。
また、一般家庭や小規模工場の場合、高圧受電設備はありませんが低圧盤だけあるという状態になっています。
つまり、柱上変圧器・配電箱で降圧された電圧を受け取る装置が低圧盤というわけです。
深堀していくとどんどん脱線していくので、詳しくはこれ以上説明しないことにします。
色々な装置が出てきて混乱しているかもしれませんが、ここで言いたいことは一つだけです。
とにかく、送電されてきた電気を設備が最初に受け止める装置が受配電機器なのです。
ここだけ押さえておきましょう。
受けた電気を配電する機器なので、覚えるのは苦ではないかと思います。
3.受配電機器の役割
大規模工場・小規模工場・一般家庭などに適切に変圧された電気が送電されてくるので、その電気を使って様々な電子機器や家電製品を動かすことが可能になります。
ただ、最初に述べたように、電気に関するトラブルはちょっとした要因で簡単に引き起こされます。
なので、供給された電気を分配する前に、電気を安全に使用できるように短絡・漏電・地絡・過電流などに対する保護対策をして、電気の事故を未然に防いだり、被害を抑えるように努めることが大切になります。
具体的には、短絡・漏電・地絡・過電流などが発生したとしても、すぐに電気を遮断して電気設備の火災・損傷を防ぐような対策が必要です。
ここで思い出して欲しいのですが、変電所・柱上変圧器・配電箱で変圧された電気を最初に受け取る機器は何でしたでしょうか?
受配電機器でしたね?
つまり、電気設備にて電気を安全に使えるように保護対策を詰め込んだ機器が受配電機器なのです。
4.受配電機器のプロセス
では、実際にどのような観点で受配電機器が電気起因のトラブルを防止しようとしているのか説明していきます。
受配電機器が実行しているプロセスは、測定・検知/通達・停止です。
電気を測定する
電子部品や電線などには、印加可能な電圧・電流・電力の最大値が存在します。
いわゆる定格というヤツです。
定格を守らずに使用するとどうなるかと言うと、発火・焼損などの事故に繋がる恐れがあります。
胃袋の許容量を超えて詰め込めば胃が破裂するのと同じで、許容量を超えた電気を与えると破壊に結びつくわけです。
その為、もし仮に定格電流3Aと表示されていた機器があったとしたら、その機器には3Aより小さな電流しか流してはいけないのです。
では、どのようにして定格を守れているのかどうかを判断すれば良いでしょうか?
普通に測定すれば良いですよね。
ということで、回路に流れている電気が正常値なのか異常値なのかを判断するために、電圧や電流などの電気の大きさを測定することが大事になっていきます。
なので、電圧計や電流計を使用して電気を測定していきたいわけですが、高圧の場合は流れる電流量が多過ぎてそのままでは測定することができません。
そこで、高圧の場合は変成器という機器を使って測定しやすい大きさの電圧・電流に変換しています。
変成器の種類としては、変圧器(電圧を変化させる機器)・変流器(電流を変化させる機器)・変圧変流器(電圧と電流を同時に変化させる機器)・零相変流器(回路からの地絡・漏電を検知する機器)などがあります。
ここで説明した電圧計・電流計・変成器などが、受配電機器の中に搭載されています。
異常を検知して判断する
電圧計・電流計で回路に流れている電気を測定して電気が正常値なのか異常値なのか判断すると述べましたが、受配電機器の場合はちょっとやっていることが違います。
仮に、電流計で回路の電気を測ったら異常値になっていたとします。
じゃあ次はどうすれば良いのでしょうか?
電流計だと測ってそこで終わりなんですよね。
『測ったよ!!(正常値なのか異常値なのか知らんけど)』となっているわけです。
ということで、測定した上でしきい値(ボーダーみたいなもの)を超えたら異常だと判断できる機器が必要になります。
そのような役割を持つ機器のことを、保護継電器と呼びます。
保護継電器の種類は多々ありますが、過電流を検知する過電流継電器や地絡を検知する地絡継電器などが存在します。
ちなみに、あくまで検知したことを知らせる信号を出すとこまでが保護継電器の仕事であって、その信号を受け取ってどう動作するのかは他の機器次第となります。
電気の供給を停止させる
仮に電気ストーブが何故か発煙し出したら、あなたならどうしますか?
とりあえずコンセントを抜いて電源供給を断つのではないでしょうか。
仮に会社のパソコンがウイルスにかかった疑惑が出てきたら、あなたならどしますか?
インターネットに接続していると他のパソコンにもウイルスが感染するかもしれないので、会社のサーバに繋いでいるLANケーブルを引っこ抜くかと思います。
このように、何かしらの異常があったら、とりあえず元を断つのが一番なんですよね。
電源を切るなり、インターネットの接続を切るなりです。
ということで、電気回路においても異常時には元を断つ…つまり電気を止めるようにしています。
保護継電器では異常を検知したら信号を出すと説明しました。
その信号を受け取った際の主な行動が電気の停止というわけです。
異常を検知した瞬間に電気を止めにいくので、繋がれた負荷が発火したり焼損したりする前に動作を停止させることができます。
ちなみに、異常値を検知した場合は遮断器で回路を開放して遮断しますが、過電流に対する保護対策としてはヒューズもよく用いられています。
ヒューズは、過電流が流れると熱によって内部の導体部が溶断し、物理的に回路の接続を遮断することができる部品です。
詳しくは別途まとめてあります。
5.異常時以外でも電気を止める対策は必要
受配電機器が実行しているプロセスは測定・検知/通達・停止だと述べましたが、これは異常が発生した際の安全対策です。
実際は、異常が発生したという理由以外で電気の供給を停止することも普通にあります。
電気設備の保守点検作業をすることになったとします。
この時、大元の電源は生かした状態で部分的に点検をする部分だけ一時的に電流を止めたいという場合があります。
他にも、点検作業中に作業者が感電しないように回路に電気が残っていない状態にさせておくような機能も場合によっては必要になります。
そんな時のために、電気を止める機器が存在します。
どんなものがあるのかと言うと、回路を電源系統から切り離して電気が流れないようにする断路器、電気が流れている状態から回路を開放する開閉器などが存在します。
例えば、断路器を使うと完全に回路が電源と切り離されるので、安全に点検作業を実施する際に役立ちます。
ただ、断路器は回路を切り離すための機器であって、電流の流れている回路をそのまま開放できる機器ではありません。
なので、もし断路器を使用する時は、前段に遮断器や開閉器を起き、あらかじめ回路に電流を流していない状態を作り出しておく必要があります。
開閉器は開閉器で、通常の電気回路においては電流が流れている状態でも回路を安全に開放できますが、もし短絡して大電流が流れていたら回路を安全に開放することはできません。
機器によってカバーしきれる範囲が違ってくるので、上手いこと組み合わせて使っているのです。
とにかく、断路器や開閉器も含めて、電気を安全に使うための機器が受配電機器の中にたくさん入っているとい理解してもらえればOKです。
以上、「受配電機器」についての説明でした。