今回は、「半波整流回路と全波整流回路」についての説明です。
1.有名な整流回路
ダイオードは順方向に電流を流しやすく、逆方向に電流を流しません。
この作用のこと整流作用と呼びます。
このダイオードの整流作用を利用して交流を直流に変換する回路のことを整流回路と呼びます。
ダイオードは順方向にしか電流が流れないという性質を利用することで、交流から直流へ変換するのです。
今回は、有名な整流回路である半波整流回路と全波整流回路の原理について説明していこうと思います。
ちなみに、半波整流回路と全波整流回路は厳密には交流を脈流(極性は一定だが、大きさが変動する性質を持った電流のこと)にする回路であり、一般的に言うところの直流を作るには別途平滑回路やチョークコイルなどが必要になります。
その辺りの説明は今後順番に実施していくので、一旦置いておきます。
まずは前段階の整流の仕方から抑えましょう。
2.半波整流回路とは?
半波整流回路とは、交流波形を片方の極性のみ整流して半分だけ取り出す回路のことです。
半波整流回路は、以下のような構成になります。
普通に交流電源とダイオードと負荷を繋いだだけですね。
負荷にかかる電圧がなんか半分無くなっていますよね?
交流電源からダイオードのアノードの方向を正の方向、交流電源からダイオードのカソードの方向を負の方向として考えた時に、何故このような負荷電圧を得ることができるのかを簡単に説明していきます。
ダイオードは順方向にしか電流が流れません。
要するに、アノードからカソードの方向に電圧がかかった時にしか電流は流れないのです。
では、交流電源からダイオードのアノード方向に電圧がかかるのは、交流電源波形のどの区間でしょうか?
答えは、ωtが0~π[rad]の半周期の時です。
π~2π[rad]の残りの半周期は、交流電源からダイオードのカソード方向に電圧がかかりますので電流は流れません。
交流波形ってプラスになったりマイナスになったりしてよくわからないかもしれませんが、電圧の印加される向き(電流の流れる向き)が反転するだけなんですよ。
回路に電流が流れないということは、当然負荷にも電流は流れません。
だからπ~2π[rad]の時の負荷にかかる電圧も“0”になるんです。
その結果、半分の山だけが残るわけです。
このように、半分の波形を整流する回路だから半波整流回路です。
名前は単純なんですよ。
ここで『整流回路って名前なのに直流になってないじゃん』と疑問に思った方がいた場合、根本的なところで直流と交流の違いを理解できていないということになるので、以下の記事を参考にしてみてください。
半波整流回路で得られる出力電圧は、まごうことなき直流なんですよ。
3.全波整流回路とは?
全波整流回路とは、交流波形を正と負の両方の極性を整流して一つの極性として取り出す回路のことです。
全波整流回路は、以下のような構成になります。
何やらダイオードが4個ブリッジ接続されていますね。
その様から、ブリッジ整流回路とも呼ばれます。
全波整流回路の方が一般的な呼び方ですけどね。
負荷にかかる電圧を見てみると、π~2π[rad]の半周期の極性が反転していることがわかります。
ダイオード群が上手いこと作用して、入力電圧の負の極性区間も正の極性として取り出すことが可能になっているのです。
半波整流回路は半分の波形のみに整流していたから半波整流回路という名称だったように、全波整流回路は極性に関わらず全部の波形を整流するから全波整流回路なのです。
では、肝心の『何故そうなるのか?』を見ていきましょう。
まあ、普通に電流の流れる向きを順番に追ってみるだけですけどね。
図3の赤矢印は印加電圧の横軸が0~π[rad]の範囲のプラス方向の波形の場合の経路、青矢印は印加電圧の横軸がπ~2π[rad]の範囲のマイナス方向の波形の場合の経路です。
この経路を比較してみるとわかると思うのですが、経路は異なるものの負荷に電圧が掛かる方向は一致しています。
要は、負荷にとっては常に一定方向の電圧が掛かっていることになるのです。
だから負荷の電圧は極性が変わらないわけです。
交流電源の負の電圧をダイオードを組み合わせることで上手いこと使っているんですね。
ちなみに、半波整流回路及び全波整流回路にチョークコイルやコンデンサなどの素子を接続することで脈流が平滑になり、直流電圧として扱えるようになります。
その為、これらの整流回路はAC/DCコンバータの説明時などによく登場します。
ここでの説明は割愛しますが、いつかまとめるつもりです。
以上、「半波整流回路と全波整流回路」についての説明でした。