今回は、「ヒューズ」についての説明です。
1.ヒューズとは?
ヒューズとは、回路に大きな電流が流れた際に回路を保護するための安全装置となる部品のことです。
想定外の箇所が短絡したりと何らかの異常により大きな電流が機器や部品に流れると、定格をオーバーして破壊・発火に繋がり兼ねません。
そうならないように回路の上流に配置して、大電流が流れたら率先して回路を遮断して保護するのがヒューズの役割です。
どうやって保護するのかというと、物理的に溶断して回路を開放します。
『ヒューズが切れる』とか『ヒューズが飛ぶ』とよく言いますが、あれは実際にヒューズが切れる、もしくははじけ飛んでいるからなんです。
ヒューズは種類によって見た目も大きさも異なりますが、共通点があります。
電極の間を融点の低い金属で繋いでいる点です。
抵抗を持つ物質に電流が流れると発熱しますよね?
なので、大電流が流れるとその金属部分が真っ先に溶融して回路が遮断されるのです。
形状は違っても原理は同じなのです。
当たり前ではあるのですが、回路を保護するために溶断するのがヒューズなので、溶断したヒューズは修理時に交換する必要があります。
ヒューズには種類がそこそこあるのですが、取り外し可能なものは素人でも軒並み簡単に交換できるのが良い点です。
2.ヒューズの種類
ヒューズの種類は大きく分けるとガラス管ヒューズ・工業用ヒューズ・車載用ヒューズ・基板実装用ヒューズの四種類になります。
ガラス管ヒューズ
電極の間にヒューズエレメントという融点が低く非常に細い金属があり、ヒューズエレメント部分は中が見えるように透明な硬質ガラス管の中に収められている。
ガラス管なので、ヒューズエレメントが切れていると一目瞭然になる。
小型・低コスト・ガラス管に収まっていて外気に触れないので発火しにくいというメリットがある。
家電製品のAC電源ラインの大元に入っていることが多い。
また、電極部分をよく見ると何A品なのか書いてあったりする。※ 絶対ではない。
工業用ヒューズ
工業用なので工場などで使用される。
大電力に対応しているヒューズ。
ガラス管ヒューズと同じような形状をしていますが、工業用ヒューズは不透明の素材を使用しているので中が見えません。
ヒューズが切れているかどうかは見た目で判断できないんですね。
車載用ヒューズ
電極-ヒューズエレメントー電極という繋ぎ自体は変わりません。
樹脂で覆われており、リードが二本伸びた形状をしています。
この車載用ヒューズをヒューズボックスという容器にまとめて詰め込んで車に実装しています。
車載用ヒューズは一ヶ所にまとめられているのです。
樹脂は青・赤・黄・橙など様々な色が用意されており、色ごとにどの程度の電流で溶断するのか決まっています。
機会はそうはないとは思いますが、車載用ヒューズが切れてしまった場合、自分で挿抜が可能だったりします。
ヒューズボックスから車載用ヒューズを抜くのには専用の治具を用意されていることがありますが、普通にラジオペンチで挿抜可能です。
基板実装用ヒューズ
チップ型・リード型・ヒューズホルダー型(ガラス管ヒューズをセット可能)・ヒューズ抵抗器(ヒューズとして機能する抵抗器)など様々なタイプが存在する。
ヒューズは回路を保護して溶断すると交換が必要なので、プリント基板に実装してしまった場合その辺りをどうしているのか疑問ではある。(個人的に使用経験が無いため)
3.ヒューズに流れる電流の関係
縦軸をヒューズに流れる電流、横軸を溶断までにかかる時間にしたグラフは以下のようになります。
定格電流
この電流値までは流してもヒューズは溶断しない。
仮にヒューズに3A/150Vと書かれていた場合、定格電流が3A、定格電圧が150Vとなる。
この場合、3Aなら流してもギリギリ大丈夫。
溶断電流
過電流でヒューズが切れる領域。
元々想定していた使い方なので、安全に回路を遮断できる。
当たり前ですが、電流が大きいほどヒューズの溶断にかかる時間は短くなります。
電流が大きいほど発熱量が上がりますからね。
遮断電流
ヒューズが安全に回路を遮断できるギリギリのライン。
許容電流・定格遮断電流など様々な呼び方をされている。
この電流値を超える場合、内部の金属が溶断するでは済まず、ヒューズ自体が壊れる可能性がある。
ヒューズが破壊されると部品が飛散する可能性があって危険。
ヒューズに限った話ではないですが、その製品の動作がギリギリ保証されるラインでは使用せず、ある程度のマージン(余裕)を持たせて使用しましょう。
何Aで何秒遮断に時間がかかるかはそのヒューズごとに差があり、詳しくは各々のデータシートに記載されています。
なので、回路構成から適切なヒューズを選択しましょうね。
ちなみに、電源投入時やスイッチのON/OFF時などに瞬間的に大きな電流が流れることがあるので、その電流では切れない性能のヒューズを選ぶ必要があることに注意です。
以上、「ヒューズ」についての説明でした。