今回は、「FFC(フレキシブルフラットケーブル)」についての説明です。
目次
1.FFCとは?FFCを使うメリットについて
私達の身の回りには色んな電線が存在しますよね。
それらの電線の形状を思い浮かべて欲しいのですが、全部円形・楕円形ではありませんか?
家電製品の電源コードは丸いですし、LANケーブルも丸いですよね。
ですが、製品の小型軽量化が進む中、円形というものは無駄に場所を取ってしまうのであまり良くないです。
円と円の間にどうしても隙間ができてしまうので、小型化に向いていないんですよ。
電源コードやLANケーブルのように機器の外部で接続するような電線は特に気にすることは無いのですが、機器内部のプリント基板に配線する場合はスペースに限りがあるので円形だと不都合なことがあります。
そこで、平型にした導体・平型にした絶縁体を使って大幅に薄くしたケーブルが誕生しました。
それがフレキシブルフラットケーブル[Flexible Flat Cable]、略してFFCです。
[flexible(柔軟)]で[flat(平坦)]なケーブルです。
平型導体を平行に並べることによって小型化・多芯化を可能にしたケーブルで、PCやTVなどの製品内部で使用されていることが多いです。
機器の内部には色んな部品やプリント基板が存在します。
それらに搭載されたコネクタとケーブル末端部のコネクタを嵌合させることで部品を接続するのが普通ですが、この方法だとどうしてもコネクタのピッチ分のスペースをプリント基板に確保する必要があります。
※ピッチ…端子と端子の距離のこと。
なので、複数の信号をプリント基板から別のプリント基板へ伝達しようとした場合、結構無駄にスペースを取ってしまうことがあります。
電源ラインのような大きな電流が流れる箇所は、電線も太くする必要があるのでコネクタも大きくする必要があります。
しかし、信号ラインのような大した電流が流れない箇所は電線は細くて構わないので、コネクタもできるだけ小さいものを選びたいところです。
そこでFFCの出番です。
FFCにはコネクタが付きません。
ではどうなっているのかというと、末端部の導体が露出しています。
この導体露出部がうまく噛み合うようなコネクタをプリント基板に設置し、挟み込んで手動でロックすることで物理的に固定するような方式になっています。
なので、通常のコネクタだと導体間隔が1.5mmとかだったりするのに、FFCだと0.5mm間隔なんてものも実現できています。
従って、仕様によってFFCも使用することがプリント基板の小型化に結びつくわけです。
ちなみに、値段も安いです。
別に特殊な材料を使っているわけではないですし、寧ろ薄くなっていますからね。
ついでに言うと、折り曲げても大丈夫です。
2.FFCの構成と作り方
FFCは、先程述べたように平型にした導体・平型にした絶縁体で構成されています。
実際にどのように作られているのかを簡単に説明します。
①平型導体(正面から見たら長方形)を平行に一定間隔で並べます。
②平行導体群の上下をプラスチックフィルムテープ(絶縁フィルム)で挟みます。
③接着剤を使用してプラスチックフィルムテープを熱溶着・圧着します。
完成!!
プラスチックフィルムテープや接着剤が平型導体同士を絶縁している感じですね。
個人的には平型導体の作り方が気になるところです。
金型でも作ってるのかな…?
ちなみに、これは基本的なFFCの作り方なので、特殊なFFCの場合はその構成や作り方が異なることがあります。
例えば、グランド処理有りと明示されているFFCがあった場合、内部構成は以下のようになります。
平型導体を一定間隔で並べるところは同じなのですが、1つ置きに導電性の接着剤で互いに導通するようにしてありますね。
この共通化した導体部をグランドに落とします。
そして、共通化していない平型導体には普通の信号を通らせます。
こうすることで、各信号をグランドで覆うことになり、ノイズ耐性等が向上するわけです。
3.フラットケーブルとフレキシブルフラットケーブルの違い
FFC(フレキシブルフラットケーブル)が世に放たれて認知されているから存在感が薄いのですが、フラットケーブルというケーブルも存在します。
フラットケーブルとは、細いケーブルを複数横並びにして平面状に束ねて帯のようにしたケーブルのことです。
リボンケーブルとも呼ばれます。
フラットケーブルの場合、細くて柔らかい丸い電線を溶着して形成するわけです。
なので、平型導体とか使用していないんですね。
その為、名前は似ているものの、フラットケーブルとフレキシブルフラットケーブルは別物です。
灰色一色もしくはカラフルで平坦なケーブルがあったら、それはフラットケーブルです。
ちなみに、フラットケーブルはフレキシブルフラットケーブルほどピッチを狭くできず、普通にコネクタ接続します。
電線の先に端子を圧着するのではなく、フラットケーブル用のコネクタの部品で線材を挟み込むことで手圧着が可能です。
材料さえあれば素人でも自分で作れるという利点はあるわけです。
4.FFCとFPC(フレキシブル基板)の違い
FFCと似たような配線材としてFPCというものが存在します。
どちらも薄く平べったい形状をしていて、FFCは白が多く、FPCは茶色が多いです。
パッと見はほぼ同じなんですよね。
FPCとは、[Flexible Printed Circuit]の略称です。
[flexible(柔軟)]なプリント基板です。
フレキシブル基板とも呼ばれます。
FFCはケーブル、FPCは基板なんです。
一般的なプリント基板は、リジッド基板と呼ばれる硬い基板です。
ですが、FPCは柔らかい素材でできているので曲げることが可能です。
ただし、柔らかいと言っても基板は基板なので、気を付けて取り扱わないと簡単に断線してしまうデリケートな基板です。
基本的にオーダーメイド品なので、FFCと比べて見かける頻度は少ないと思います。
5.日本のFFCメーカは少ない
日本で有名なFFCメーカは、坂東電線と住友電工くらいです。
他はほぼ海外です。
なぜこんなに日本のFFCメーカが少ないのかと言うと、日本では競争に付いていけないからです。
FFCの場合、より薄く・よりピッチを狭めるという方向に進化させていきたいところなのですが、現状0.5mmピッチより狭めることは困難になっています。
プリント基板に搭載するコネクタ側を0.5mmより縮めることができないのです。
そうするとどうなるのかと言うと、メーカごとに大差ない製品が出来上がります。
性能に差を付けられないんですね。
そうなると、物資に乏しい日本では中国や台湾などのメーカと価格競争できないのです。
そのためか、ちょっと昔はFFCを作っていた日本メーカも存在するのですが、いつの間にかFFCの生産を中止していたりするのです。
以上、「FFC(フレキシブルフラットケーブル)」についての説明でした。