今回は、「EMIとEMSとEMC」についての説明です。
1.初めに
電気製品にはノイズが付き物です。
ノイズを直訳すると“雑音”です。
電気機器・電子機器からノイズ(電磁波)が発生していることもありますし、配線されているケーブルに足を引っかけた際の衝撃でノイズが発生することもあります。
ノイズの影響を受けると電気信号が本来意図していない形状に変化してしまうので、通信障害に電子部品の破壊とあらゆる不具合が発生します。
そんなノイズに対して電子機器メーカが何も対策をしていないということは当然ながらなく、ノイズフィルタを挟んだり、クランプフィルタを取り付けたり、セラミックコンデンサを使用したり、GNDのパターンを弄ったりと様々な対策を行っています。
そんなノイズの話をしていると、EMI・EMS・EMCという単語がさも知ってて当たり前のように出てきます。
ノイズ関連の知識としては本当に基礎的な部分ではあるのですが、当然ながら初見では何のことかわかるはずがありませんよね。
ということで、今回はEMIとEMSとEMCについて簡単にまとめてみました。
2.EMIとは?電磁気妨害とは?エミッションとは?
EMIとは、[ElectroMagnetic Interference]の略称です。
意味は“電磁気妨害”です。
EMIのことをエミッションと呼びます。
EMIとは、電気機器・電子機器が放出する電気的なノイズのことです。
なので、EMI対策と言ったら電気機器・電子機器が放出するノイズを抑えるための対策ということになります。
最初に述べたように、ノイズはあらゆるものに影響を与えます。
電気機器・電子機器の周りには大体様々な機器・電子素子が密集しているので、電気機器・電子機器がノイズを放出していると周辺機器の不具合に直結します。
なので、EMI対策はとても重要なのです。
製品の信頼性・性質・特性を明確にする試験として信頼性試験というものが存在するのですが、その項目の一つとして放射ノイズの程度を測定するエミッション試験というものが存在します。
このエミッションはEMIのことを指しています。
エミッション試験は放射エミッション試験と伝導エミッション試験に分類されます。
それぞれは以下のような違いがあります。
空気中に直接発せられるか、ケーブルを伝うかの差ですね。
エミッション試験を行う際は、場合によっては壁一面にノイズを遮断する素材が付いている専用の暗室内で行う必要があったりします。
放射エミッション試験に関しては大きなアンテナでノイズを測定するので、如何にもな光景になります。
3.EMSとは?電磁感受性とは?イミュニティとは?
EMSとは、[ElectroMagnetic Susceptibility]の略称です。
意味は“電磁感受性”です。
EMSのことをイミュニティと呼びます。
EMSとは、電気機器・電子機器が電気的なノイズに耐えうる能力を指しています。
なので、EMS対策と言ったら電気機器・電子機器がノイズを受けた際に問題なく動作するための対策ということになります。
EMIの説明をしている際に電気機器・電子機器がノイズを放出していると周りの機器・電子素子の不具合に直結すると述べました。
このノイズを受け取る側の機器への対策がEMS対策というわけです。
製品の信頼性・性質・特性を明確にする試験として信頼性試験というものが存在するのですが、その項目の一つとして放射ノイズからの影響を想定したイミュニティ試験というものが存在します。
イミュニティ試験の中には、ファーストトランジェント/バースト試験・インパルス試験・静電気試験などの分類があります。
ケーブルにわざとノイズを与えた際の製品の動作を確認したり、人が触れた際に発生する静電気を考慮して人の触れそうな場所にわざと放電させて動作を確認したりします。
ちなみに、何れの試験も検証段階では耐久を見るために想定していないレベルのノイズを印加することが多いので、製品にダメージが入って壊れることもあります。
…セラミックコンデンサが発光して『ふおおぉぉぉ』と叫んでたヤバいオバサンを思い出しました。
4.EMCとは?電磁両立性とは?
EMCとは、[ElectroMagnetic Compatibility]の略称です。
意味は“電磁両立性”です。
簡単な話、ここまで説明したEMIとEMSを両立させたものがEMCです。
つまり、EMC対策と言ったらノイズの発生を抑え、ノイズの影響も受けにくいという理想的な性能を維持するための対策を指しているわけです。
上記の理由から、ノイズ対策のことをまとめてEMC対策と呼んでいることが多いです。
ちなみに、EMSはエミッション、EMIはイミュニティと呼びますが、EMCは調べても特に横文字が出てきませんでした。
5.EMCの認証について
どんな製品にもノイズが付き物だからこそ、EMC対策として試験を行います。
では、試験を行えばそれで電気製品として売りに出せるのかというと、そういうわけではありません。
例えば、欧州に電気製品を輸出しようと考えた場合、EC指令の一部であるEMC指令を遵守する必要があります。
EMC指令は、電磁波を発生する製品または電磁波の影響を受ける恐れのある製品を対象とした標準規格です。
この規格を満足して認証を得ると、認証マーク(CEマーキング)の貼り付けが許可されます。
この認証マークがなければ、欧州で電気製品の販売はできないのです。
このように、EMCの対策をして、ある一定の水準に達しているという印が無ければいけないのです。
ちなみに、日本で出回っている電気製品に関してはJIS規格という日本の規格に則ることになるのですが、JIS規格よりもEC指令の方がより厳しい内容となっています。
つまり、EC指令に準拠していれば、自ずとJIS規格も満たしていることになります。
その為、グローバルな視点を持っている会社の場合、EC指令を満たすような製品作りをして、CEマーキングの表示がデフォルトになるようにしていることの方が多いです。
また、EMCに関する規格はIEC規格・CISPR規格・EN規格など、他にも様々な種類が存在しますので、取引先によってどの規格を満たすのかはしっかり確認する必要があるのです。
以上、「EMIとEMSとEMC」についての説明でした。