【基礎から学ぶダイオード】 ダイオードとは? ~電流を一方向にしか流さない部品~

電気電子
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ダイオードは電流を決められた方向にのみ流すことができる部品です。
なのですが、回路図を眺めていると電流の流れに対して逆方向に接続していることもあります。
ダイオードの基本部分しか知らない場合、この辺りで結構な疑問符が浮かぶと思うんですよね。
ということで、ダイオードの動作原理や種類などを1からわかりやすくまとめてみたのが本記事となります。

今回は、「ダイオード」についての説明です。

1.ポイント

ダイオード

n型半導体とp型半導体を接合したもの(n型半導体と金属を接合したタイプもある)。
電流を一定方向にしか流さない。
定電圧を供給する、サージを吸収する、発光するなど様々なタイプがある。

2.ダイオードとは?

一般的なダイオードとは、n型半導体とp型半導体を接合したものです
n型半導体とp型半導体を接合することをpn接合と呼び、一般的にはダイオードと言ったらpn接合ダイオードのことを指します。

ダイオードとは、電流を一定方向にしか流さないという特徴を持った半導体素子です。
電流はp型半導体からn型半導体方向には流れますが、n型半導体からp型半導体方向にはほとんど流れません
ちなみに、n「型」でもn「形」でも良いみたいです。

一般的なダイオードの構成図、回路記号(図記号)、実物のイメージ図は以下の通りです。

図1

先程述べたように、ダイオードはn型半導体とp型半導体を接合したものです。
n型半導体とp型半導体の接合部付近では電子と正孔が結合する為、キャリアの存在しない空乏層という領域が発生します。

ダイオードはp型半導体からn型半導体方向へ電流が流れると述べましたが、一般的にはアノード(A)からカソード(K)へ電流が流れると言います。
ダイオードから伸びているリード線をそれぞれアノード/カソードと呼ぶのです。

実際のダイオードは、イメージ図のようにカソード(K)側に目印があります
図記号の縦線の配置もカソード側に付く為、実物と図記号を併せて覚えると記憶に残りやすいです。
アノードからカソードに電流が流れるので、電池のプラス極がアノード、マイナス極がカソードみたいなイメージでも良いかもしれませんね。

カソードの綴りは[cathode]です。
ですが、カソードを表す記号が“C”ではなく“K”になっていますよね?
これは間違えているわけではありません。

カソードの英語の綴りは[cathode]なのですが、語源はドイツ語の[kathode]になります。
ドイツ語の[kathode]は[陰極]という意味です。
だからカソードは“K”と表されていることが多いです。
“多い”と書いたのには理由があり、カソードは“C”と書かれていることもあります。
ただ、ほぼほぼ“K”と書かれています。
“C”でも間違えているわけでは無いという点は頭の片隅にでも置いておきましょう。

3.ダイオードの動作原理

では、pn接合ダイオードの電流の流れの原理について考えていきます。

図2のようにp型半導体側に直流電源のプラス側を繋ぐと、異極性同士で吸引力、同極性同士で斥力が発生する為、電子が循環して電流が流れるようになります
電子が電源のマイナス側から出てプラス側へ戻っていくことで電流が流れる為、n型半導体の中の電子がp型半導体側に押し出されて回路内で循環しているわけです。

図2

このように、電流が流れる方向を順方向もしくは順方向バイアスと呼びます。
ちなみに、キャリアが常に移動している為、空乏層は無くなります。

逆に、図3のようにn型半導体側に直流電源のプラス側を繋ぐと、異極性同士で吸引力、同極性同士で斥力が発生する為、電子が循環せずに電流が流れなくなります
電子が電源のマイナス側から出てプラス側へ戻っていくことで電流が流れる為、p型半導体の中の正孔と電子が結合してそこで電子の流れがせき止められてしまうわけです。

図3

このように、電流が流れない方向を逆方向もしくは逆方向バイアスと呼びます。
ちなみに、キャリアが引き寄せられて空乏層はより広がります。
逆方向の場合、実際は電流がほとんど流れなくなります(数nA~数μA程度は流れる)。

以上のように、ダイオードは順方向だと電流が流れ、逆方向だと電流が流れなくなります。
この関係を指してスイッチング機能と呼んでいます。

4.ダイオードの整流作用

ダイオードは順方向に電流を流しやすく、逆方向に電流を流さないと述べました。
この作用のこと整流作用と呼びます。
その為、整流ダイオードと呼ばれていることもあります。
また、ダイオードの整流作用を利用して交流を直流に変換する回路のことを整流回路と呼びます。

整流とは、交流から直流を作り出すことです。

交流は、周波数に応じて値が増加したり減少したりを繰り返します。
極性もプラスとマイナスを行ったり来たりしますよね。
それに対して直流は、少なくとも極性は一定に保ちます。

どちらの方が一般的な目で見て安定しているように感じますか?
もちろん直流ですよね。
つまり、交流を直流に変換しようとした場合、一見暴れているような波形が“整えられる”わけです
だから整流と呼びます。

家電製品なんかが該当するのですが、途中まで交流電圧を供給して、最終的には直流電圧に変換しているということは多々あります。
コンセントまではAC100Vが来ているけど、ドライヤーや電子レンジの内部回路では直流に変換して使用しているといった具合にです。
そんな電気製品には、AC/DC変換を担っている整流回路が組み込まれているのです。

ちなみに、整流しただけでは脈流(極性は一定だが、大きさは変化する波のこと)になるだけです。
その後段に平滑回路を設けることで、値が一定で極性も変化しない均一な直流波形を得られます。

ダイオードの電圧-電流特性は以下のようになっています。

図4

順方向の場合、0.6~0.7V程度の電圧が印加されると急激に電流が流れるようになります。
この時の電圧を順方向電圧、電流は順方向電流と呼びます。
量記号はVfです。(VF表記のこともあるのでどちらでも良いのかもしれないです)
おそらく順方向[forward]の“F”なのではないかと思います。
順方向電圧には製品により差がありますし、温度による変化も考えられる為、実際に使用する場合はデータシートをよく確認しましょう。

ちなみに、ダイオードに順方向電流が流れると順方向電圧の分だけ電圧が下がります。
学校で学ぶ勉強レベルだと、順方向電圧は一律で0.6~0.7[V]としていることが多いです。
もしくは理想的なダイオード扱いをして順方向電圧は0[V]としています。

逆方向には電流が流れないと言いましたが、負方向に電圧を上げていくとある点からダイオードの整流特性が無くなって急激に電流が流れます。
この時の電圧を降伏電圧と呼び、この現象のことをアバランシェ降伏と呼びます。
量記号はVRです。
この特性を利用し、降伏電圧を大幅に低くすることで一定の電圧を作り出せるツェナーダイオード(定電圧ダイオード)というものもあります。

5.ダイオードの温度特性

pn接合ダイオードは、順方向電圧Vfが大体0.6~0.7Vになると急激に電流が流れるようになると述べました。
これは、教科書や問題集によく載っている情報です。

ですが、実際のダイオードではそうとも限りません。
先程出てきた図4の電圧-電流特性のグラフなのですが、温度変化するとこのグラフの形状も変化します
どう変化するのかと言うと、温度上昇に伴って順方向電圧が下がっていきます。

図5

0.6~0.7Vの順方向電圧というのは、周囲環境温度が25℃の場合を指していることがほとんどです。
ここから、温度が1℃上昇する毎に順方向電圧は約2mVずつ減少していきます
要するに、教科書に載っているような問題では25℃環境下での使用を想定していて、温度特性は考慮していないから順方向電圧が0.6~0.7V程度になっているということです。

ダイオードが搭載されるような装置は高熱になっていることが多いので、ほぼ確実に順方向電圧は0.6~0.7Vよりも低い値となります。
pn接合ダイオードの電圧-電流特性は、データシート上では以下のように記されています。

図6

図6はTI社製の1SS352というダイオードのデータシートに実際に載っている特性グラフです。
ダイオードのデータシートには、このような電圧-電流特性グラフが必ず載っています。

Taとは、電子部品周りの無風時の周囲温度・環境温度のことです。
つまり、ダイオードの周辺温度ですね。
なので、周囲環境温度が-25℃・25℃・100℃の3パターンの時の電圧-電流特性が描かれているわけです
高温になるほど順方向電圧が下がっているでしょう?
その為、実際にダイオードを使用する場合は、使用環境についても考慮する必要があります。

また、当たり前ですが、ダイオードは使用していると熱が生じます。
この自己発熱も順方向電圧に影響しますので、注意が必要です。

ちなみに、逆方向への漏れ電流(絶縁体内部のような本来流れない箇所に流れてしまう電流のこと)は高温になるほど大きくなります。

以上、「ダイオード」についての説明でした。