【電気部品・電子部品の解説】 カウンタとは? ~入力機器からのON/OFF信号を数える計数器~

電気電子
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電気の仕事をしていると様々な部品を用いる機会が出てきます。
コイル・コンデンサ・IC・コンバータ・パワーサプライなどなど…名前は聞いたことあるけどイマイチ何なのか理解していないものもあるのではないでしょうか?
この記事では、そんな部品について基本からわかりやすく解説していけたらと思っています。
機械部品に関する記事も混ざってたりしますが、深く考えないでください。

分類するのが面倒だっただけです。

今回は、「カウンタ」についての説明です。

1.カウンタとは?

工場見学をしたことはありますか?
大体小学生か中学生の頃にモノづくりの現場見学ということで学校の行事でどこかしら行きますよね。
材料の状態が悪いものを自動で弾いたり、機械が自動で液体を容器に注入したり、ラベルを容器に貼り付けたり…様々な工程が自動化されているので感動したことでしょう。

その工程の最後の方で、出来上がった製品が規定数溜まったらまとめてパッケージングしているところを見たことがありませんか?
アレは、設置されたセンサが製品を捉えた際に計数カウントが進む装置を用いて実現しています
この装置のことをカウンタと呼びます。
カウントする装置だからカウンタ…そのまんまの名称ですね。

例えば、ペットボトル6個ずつでダンボールに梱包して出荷したい製品があったとします。
この場合、コンベアにセンサを設置し、ペットボトルが横切った際に信号を出力するようにします。
そして、センサの出力信号ラインをカウンタの入力信号として扱い、ペットボトルの通過した数を計測します。
ここでカウンタをあらかじめ“6”と設定しておくと、カウント数が“6”になったタイミングで今度はカウンタから信号が出力されます。
このカウンタの出力信号をロボットアームなどに伝えて動作させ、溜まったペットボトルを移動してダンボールに詰めるように設定するのです。
やってること自体はそんな複雑ではないんですよ。

ちなみに、厳密にはスイッチやセンサなどの入力機器から入ってくるON/OFF信号(主にパルス信号)を数える装置がカウンタです。
何でもいいから信号がON/OFFしてくれれば良いんです。
1回ボタンを押したら“1”、続けてもう一度ボタンを押したら“2”とカウントされていくような装置がカウンタなのです。
昔トリビアの泉というテレビ番組がありましたが、へぇボタンを押した数だけ数字が増えたでしょう?
あの表示器がカウンタです。

トリビアの泉 へぇボタン
トリビアの泉 へぇボタン

2.計測方法による分類

カウンタには、計測方法…というかその目的によって二つの種類が存在します。
それは、規定数を計測することを目的としているか数を数えること自体を目的としているかです
前者のカウンタのことをプリセットカウンタ、後者のカウンタのことをトータルカウンタと呼びます。

プリセットカウンタは先程のペットボトルの例に出てきたカウンタです
規定数の“6”になることを数え、それを伝えるのが目的です。
なので、6個ペットボトルが通過する度に信号を出力し、その都度計数をリセットして再び計測を始めます。
[preset]で[前もってセットされた]という意味になるので、名称通りのカウンタとなります。

トータルカウンタはプリセットカウンタと違って出力信号を出力しません
あくまで数を数えることを目的としているからです。
通行人調査のアルバイトで目の前を通過した人をカウンタで計測するとしたら、その数に上限は必要ないですよね?
この用途で使用するのがトータルカウンタです。
[total]も[合計]という意味なので、英単語の意味から機能は容易に想像できます。

規定数を超えた後も計測を続けるタイプも存在しますけど、大まかにはこのどちらかになります。

ただ、規定数のカウントと全積算値を両方共カウントしたい場合もありますよね?
6個ペットボトルが通過する度に信号を出力してダンボールに梱包しつつ、その梱包した製品を1日でいくつ生産できたのかもカウントしたいという場合です。
そんなことも実現できるように、プリセットカウンタでありながらトータルカウンタでもあるトータルプリセットカウンタという種類も存在します。

ちなみに、基本的に計数をカウントするタイミングは入力信号が立ち上がった時です。
規定数の信号立ち上がりを確認すると、信号を出力します。

3.カウンタのリセット方式

カウンタを計数の途中で一旦止めて、再度計数を開始したかったとします。
工場のラインで異常が発生して一時停止した時などの想定です。
この時、一時停止前のカウントの続きから計数したい場合と、一度真っ新な状態にして初めから計数し直したい場合があるかと思います。

なのですが、カウンタは基本的には電源をOFFしても計数値はそのまま保存されるようになっています
停電などの意図せぬ理由でカウンタの電源をOFFしてしまった際に、計数が消えてしまうと困りますからね。
その為、カウンタには計数をリセットする機能が存在します。

代表的なリセット方式としては、手動リセット方式・外部リセット方式・自動リセット方式・電源リセット方式があります。

手動リセット方式

カウンタに搭載されているリセットキーを押すことで計数がリセットされる方式
大体キーの近くに“Reset”と表示されていることが多いので、初心者でもわかりやすい方式です。

外部リセット方式

外部入力信号に応じて計数がリセットされる方式
カウンタにリセット入力信号端子が存在し、この端子に信号が入力されると計数がリセットされます。
CPUなどと組み合わせて使用すると、任意のタイミングでカウンタをリセットできるようになって使用の幅が広がります。

自動リセット方式

規定値に達すると自動的に計数がリセットされる方式
先述のプリセットカウンタのデフォルト設定ということです。

電源リセット方式

主電源をOFFにすると計数がリセットされる方式
先程述べたように、停電のような異常による電源OFFでも計数がリセットされてしまうというデメリットがあります。
停電記憶機能(電源OFFしても計数を記憶する機能)を持ったカウンタには、電源リセット方式は搭載されていません。
他の方式の説明を見てわかる通り、リセットは比較的簡単に実施できるので、コストを抑える以外の理由で敢えて電源リセット方式を選ぶことはない気がする。

4.カウンタの出力方式

プリセットカウンタは規定数のカウント後に出力をON/OFFする装置なので、出力端子部に何かしらのスイッチング素子が存在します

カウンタの出力部に一般的に使用されているスイッチング素子は、リレートランジスタの2択です。

リレーを使用した接点出力方式は、実際に接点を切り替えます
その為、直流と交流のどちらを使用しても問題無く、比較的大きな電流を流すことも可能です。

それに対してトランジスタを使用したトランジスタ出力方式は、直流しか取り扱うことはできません
また、容量も接点出力方式と比較して小さくなります。
反面、トランジスタの高速スイッチングを利用しているので、スイッチング速度とスイッチング精度に優れています。

ちなみに、タイマの出力形式も全く同じです。

5.カウンタの計数速度と入力信号の関係

カウンタには、当然ながら計数できる限界の速度が存在します。
この速度を、最高計数速度と呼びます。
単位は[Hz]です。

仮に、最高計数速度が10Hzのカウンタがあったとするなら、そのカウンタは1秒に入力信号を10パルスまでならカウントができるということになります。
100Hzなら100パルスです。

最高計数速度が10Hzのカウンタに1秒間に20パルスの入力信号が入って来たとしても、このカウンタは1秒間に10パルスしか計測できないので、カウントは“10”しか進まないことになります。
これでは満足に計数できなくなってしまうので、使用条件と最高計数速度には注意する必要があります。

そんな計数速度ですが、大体のカウンタは遅い計数速度(10~50Hz程度)速い計数速度(1kHz~10kHz程度)の両方を備えていて、ディップスイッチなどで切り替えが可能になっています

ここで疑問が生じませんか?
最高計数速度が1kHzのカウンタがあるなら、何故わざわざ最高計数速度を下げる機能が搭載されているのでしょうか?
理由は、ノイズ耐性にあります。

カウンタの入力信号として考えられるのは、有接点入力無接点入力です。
前者がスイッチやリレーを利用したタイプで、後者がトランジスタのスイッチング動作を利用したタイプですね。

有接点入力は、実際に接点が切り替わります。
すると、有接点部分でバウンスが発生してしまいます。
バウンスとは、ボールなどの物体を壁や床に当てた時に跳ね返る現象のことです。
ボールを床に落とすと、地面とくっつくまで何度か跳ね返るでしょう?
それと同じで、接点が切り替わる際も何度か跳ね返っているんです。
つまり、1回の接点切替をすると、実際は高速で複数回の接点切替が行われているのです。

このバウンスが、高い計数速度を選択していると誤カウントされてしまいます。

遅い計数速度の場合、計数が遅い代わりにノイズには強くなっているので、バウンスをカウントされることはありません。
なので、有接点入力の場合、必ず遅い計数速度に設定する必要があるのです。

無接点入力の場合はこのバウンスが無くなりますので、トランジスタによる高速スイッチングに対応させたいのなら計数速度も上げれば良いです。
ただ、用途を考えて遅い計数速度でも充分だったのなら、ノイズ耐性で有利な遅めの計数速度にしている方が無難ですけどね。
上記のような理由で、遅い計数速度も存在するのです。

6.カウンタの計数方式

カウンタには、加算方式・減算方式・加減算方式の3種類の計数方式が存在します。
名称からどんな計数方式なのか想像できると思いますが、一応簡単な説明を載せておきますね。

加算方式

カウントするとカウント値が増えていく方式
その名の通り、計数が加算されていく方式です。初期値は“0”から始まります。
単純に生産量を数える場合などに使用する。

減算方式

カウントするとカウント値が減っていく方式
その名の通り、計数が減算されていく方式です。
初期値は自分で設定します。一日の目標生産量を初期値に設定しておくことで、あとどの程度で生産ノルマを達成できるかが見てわかりやすくなります。

加減算方式

入力を2つ用意し、片方の入力は加算、もう片方の入力は減算とする方式
その名の通り、計数が加減算されていく方式です。
在庫管理をする際などに使用します。
ある商品の保存庫があり、取出口と投入口にそれぞれセンサを用意しておくようなイメージです。

7.カウンタの出力モード

カウンタは規定値に達した際に出力信号を出すと述べましたが、この出力信号の出し方のモードにも種類が存在します。
主要なものは、Nモード・Fモード・Cモードの3種類です。
この出力モードもディップスイッチなどで切り替え可能になっている場合が多いです。

※これらのモードの名称は、OMRON社製品で用いられているものを参考にしています。他社製品の場合は機能は同じでも名称が異なる可能性があります。

Nモード

カウント停止出力保持型
計数をカウントして規定値に達すると信号が出力され、カウントがストップします

仮にカウントがストップした状態で入力信号が入ってきたとしても、その入力信号はカウントされません。
リセットすることでカウントがストップした状態を解除できる。
製品の目標生産数を規定値として設定することで、目標個数達成時に確実にラインの流れを止めたい場合などに使用するモードです。

図1:タイミングチャート

Fモード

オーバーカウント出力保持型
計数をカウントして規定値に達すると信号が出力され、カウントはそのまま継続されます

Nモードでは規定値でカウントが止まりましたが、Fモードはカウントが止まらないのです。

Fモードは、消耗部品の交換目安を把握するのに向いたモードです。

例えば、歯ブラシやカッターの刃は消耗品ですので、使用する毎に少しずつ劣化していきますよね。
なので、目測で傷んできたと感じたら新品に交換するでしょう?
これと同じことを、工場などの工作機器に使用されている消耗部品にも適用したい場合にFモードだと都合が良いです。
交換目安とする動作回数から規定数を設定し、このカウンタの出力を表示灯とリンクさせ、作業者に消耗部品の交換時期が迫っていることを知らせるのです。

ここで重要なのは、「交換時期になった」ことを伝えるのではなく、「交換時期が迫っている」ことを伝えたいという点です。
交換時期になったからと言って、突然ラインを止めるわけにもいきませんからね。

仮に交換目安が10万回だったとして、規定値をマージンを持たせて8万回に設定しようとしたとします。
ここでもしNモードを使用したら、規定値である8万回以降はカウントしてくれないので、表示灯が点灯していても規定値をどの程度オーバーしているのかわからないんです。
ちょうど8万回くらいかもしれませんし、ほぼ10万回に達しているかもしれません。

その点、Fモードなら規定値の8万回以降もカウントは続けてくれますので、『表示灯が点灯しているから部品の交換時期は意識しよう』とか、『今週分の生産が終わったタイミングで部品を交換すれば良いか』とか、『10万回が近いから今日の業務終了のタイミングで部品を交換しよう』という具合に、自由度が増すのです。

図2

Cモード

オートリセットワンショット出力型
計数をカウントして規定値に達すると一瞬だけ信号が出力され、自動的に計数がリセットされて再スタートされます
まあ、名称そのままですね。

オートリセットされますが、外部信号を加えてのリセットも可能です。
一番最初に例に挙げた「ペットボトルを規定数ダンボールに詰め込む」という動作が、まさにCモードの動きです。

図3

8.その他の機能

カウンタによく搭載されている便利機能をいくつか紹介します。
製品によってその機能があったり無かったりしますので、参考程度に眺めてみてください。

表示色切替機能

カウント値の表示色を出力状態に合わせて切り替えできる機能
赤・橙・緑に変わるタイプが多い。
カウンタの出力状態に対応した表示色に自動で切り替わるので、遠目に見てもカウンタの状態が把握できるようになります。

キープロテクト機能

特定のキー操作を禁止する誤設定防止機能
操作が禁止されたキーは、ボタンを押しても反応しなくなります。
キープロテクトレベルという形でデータシート上にキーの設定変更可能/不可能となる組み合わせが記載されているので、一度設定したら基本的に弄るつもりのないキーが設定変更不可になるようなキープロテクトレベルを選ぶと良い。

無電源動作方式

カウンタのような装置は基本的に外部電源を供給して動作させるイメージがあるかと思いますが、カウンタには外部電源無しでも動作するタイプが存在します。
設置箇所によっては電源の引き回しが大変なことがあるので、そんな時は外部電源無し駆動タイプを使うと何かと楽です。

規定値の2段設定

本記事では、規定値を設定してその規定値にカウントが達した際に信号を出力するタイプについて説明してきました。
ですが、実は規定値を2つ定めることができるタイプも存在します。
信号を出力するための規定値の数を段数と呼ぶ為、2つの規定値を定められるタイプのことは2段設定カウンタ2段プリセットカウンタなどの名称が付けられている場合があります。

規定値の増加に伴い出力端子も別途1つ増えるので、やれることの幅が広がります。

例えば、出力モードの1つであるFモードの説明で、消耗部品の交換時期の目安として8万回の動作を規定値に設定していましたよね?
2段設定カウンタなら、8万回動作で黄色表示灯点灯(1段目の規定値)、9万回動作で赤色表示灯点灯(2段目の規定値)のような動作をさせることも可能です。

以上、「カウンタ」についての説明でした。