【基礎から学ぶコンデンサ】 バイパスコンデンサとは? ~よくGNDに接地されているコンデンサの役割について~

電気電子
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“コンデンサ”という部品は、電気製品なら必須レベルで多用されています。
電気を蓄えたり放出したり、ノイズ成分を吸収したり、何かと便利だからです。
本記事では、そんなコンデンサという部品についての知識をわかりやすくまとめてみました。

今回は、「バイパスコンデンサ」についての説明です。

1.初めに

コンデンサには多くの種類が存在しますが、バイパスコンデンサというものを知っていますか?
略してパスコンと呼ばれていることもあります。
パスコンならなんとなく聞き覚えはあるという方もいるのではないでしょうか?
以降はバイパスコンデンサだと一々長いのでパスコンで統一しますね。

さて、パスコンですが、パスコンという種類のコンデンサがあるわけではありません。
ある用途で使用されているコンデンサをパスコンと呼んでいるだけです。

今回は、パスコンとは何のことなのか、どんな用途で使用されているものなのかなどを簡単にまとめていこうと思います。

2.パスコンとは?

何かしらのプリント基板の回路図を眺めてみると、回路の至る所にコンデンサが使われていますよね?
ICの入出力ラインを見ると、すぐ近くに電源ラインとGNDラインの間に挟まれる形になったコンデンサが大量に見当たるのではないでしょうか?
アレがパスコンです。

正式名称であるバイパスコンデンサは英語で[bypass capacitor]と書きます。
[bypass]には[迂回する・回避する]などの意味があり、パスコンの用途もこの意味に通ずるものがあります。

3.パスコンの役割

では、パスコンは何のために接続されているのか簡単に説明していきます。

パスコンの役割を大きく分けると、以下の2つになります。

①電源の安定化
②ノイズの吸収(流入/流出どちらも防ぐ)

電源ラインとGNDラインの間に接続することで、ノイズをGND側にバイパス(迂回)させる働きをするからバイパスコンデンサと呼ぶわけです

…ところで、この役割ってどこかで見たことがありませんか?
これ、コンデンサの基本的な性質の説明です。

本ブログでも、「コンデンサとは? ~電荷を貯蓄・放出できる部品~」で一回説明した内容です。
要は、一般的なコンデンサとしての役割を持たせようと回路に組み込んだコンデンサは、大体パスコンに該当するのです。
どこに使われているコンデンサなのかを口頭で説明する場合に、「電源の安定化やノイズの吸収と言った一般的な用途で使われているコンデンサ」を指してパスコンと呼ぶので、聞き覚えのある方もいるのではないかと最初に述べたんですよ。

4.パスコンの容量の選び方

回路図を眺めてみるとわかるのですが、パスコンは容量が同じものを多用していることが多いです。
では、実際にパスコンの容量はどうやって決めていると思いますか?
答えは、“吸収したい周波数帯によって決める”です。
コンデンサの静電容量によって吸収しやすい周波数帯が異なるんです。

パスコンに限った話では無くコンデンサ全般に言えるのですが、コンデンサには小さな抵抗成分とインダクタ成分が含まれています。
詳しくは「コンデンサの特性① ~tanδや周波数特性について~」を参照してください。

コンデンサが小さな抵抗成分とインダクタ成分を含むとどうなるのかと言うと、コンデンサのインピーダンスが周波数帯によって変化してしまいます
理想的なコンデンサのインピーダンスは1/jωCなので、理想的なら静電容量Cと周波数f(※ ω=2πf)が大きいほど単純にインピーダンスが低くなっていきます。
ノイズの除去性能はインピーダンスが低いほど高くなりますので、静電容量Cと周波数が大きいほどノイズの除去性能が高くなるのです。

ですが、実際のインピーダンスはコンデンサに小さな抵抗成分とコイル成分が直列接続された状態に等しくなります。

図1

つまり、インピーダンスはR+jωL+1/jωCになります。

このインピーダンスについて考えると、単純に静電容量Cと周波数が大きいほどインピーダンスが低くなるとは言えなくなります。
ではどうなるのかと言うと、インピーダンスが最も低くなる点が一点存在するような周波数特性になります
要するに、100kHz付近のノイズを吸収しやすいコンデンサもあれば、10MHz付近のノイズを吸収しやすいコンデンサもあるのです。

この周波数特性は同メーカ・同シリーズのコンデンサだとしても静電容量によって変化するので、どんなノイズ成分を除去したいのかによってパスコンの容量も変化させる必要があるのです。
逆に言うと、除去したいノイズ成分の周波数は大体似通っているので、パスコンの容量が同じものを多用していることが多いんですね。

5.パスコンを並列接続する意味

パスコンはその静電容量によって除去しやすい周波数帯が異なるということはわかったかと思います。

では、何箇所かノイズ対策をしたい周波数帯を持つ回路があった場合はどうしましょう?
この答えは単純で、ノイズを除去したい周波数帯に適合したパスコンを全部並列接続すれば良いのです。

コンデンサの周波数特性を知らなければ合成静電容量が増えるだけでなんで並列接続しているのかわかりませんが、しっかり理解していると周波数帯域に合ったパスコンを選んで接続しているのだとわかるのです。
ただ、数が増えればそれだけスペースを取るので、無暗矢鱈にパスコンを並列接続すれば良いというわけではないですけどね。

ちなみに、複数のパスコンを並列接続する場合は、静電容量が小さいものほどICの近くに配置した方が良いです。
理由は、静電容量の小さなコンデンサほど配線の抵抗成分やインダクタ成分の影響を受けやすいからです。
とは言え、影響を受けやすいか受けにくいかの違いであって影響自体はあるので、パスコンの配置は基本的にICの近くにするのが望ましいです。
特に理由がなければ最短経路を取るように意識しましょう。

6.パスコンとデカップリングコンデンサ

パスコンはデカップリングコンデンサと呼ばれていることもあります。
パスコン(バイパスコンデンサ)は[bypass/迂回する]、デカップリングコンデンサは[decouple/分離させる]という意味です。

パスコンはノイズをGND側にバイパス(迂回)させる働きをするからバイパスコンデンサと呼ぶと説明しました。
対してデカップリングコンデンサは、ノイズ源とその接続先の間をデカップル(遮断)してノイズの影響を無くすからデカップリングコンデンサと呼びます。
つまり、どちらも最終的にはノイズの影響を無くすことを目的としていて、やっていることは同じなんです
なので、パスコンとデカップリングコンデンサは同じものという認識で問題無いです。

ちなみに、直流成分を通して交流成分を取り除くコンデンサを利用した回路のことはデカップリング回路と呼びます。
逆に、直流成分を通さずに交流成分のみ通過させるコンデンサを利用した回路のことはカップリング回路と呼びます。
カップリング回路は、交流信号にコンデンサを直列に接続した構造になります。

以上、「バイパスコンデンサ」についての説明でした。