今回は、「UL規格」について記述していきます。
1.規格と法律の違い
本題に入る前に規格と法律について補足説明します。
まずは規格からです。
単純に“規格”と検索すると、“製品・製品寸法・材料・工程などに対して定義した基準”というニュアンスの説明が出てきます。
イマイチわかりづらい説明ですよね。
なので、何かを作る際のベースとなるものを規格と捉えてください。
例えば、ある会社がお饅頭を作って売ろうとしているとします。
その際、量産をするためにA工場とB工場で製作をすることにしました。
売ろうとしているお饅頭には当然種類がありますので、その種類ごとに同じ原材料・サイズ・量でないといけません。
大きさや形がバラバラだと生産コストと売値のバランスが崩れてしまいますからね。
なので、『この材料を使って、この金型で、この分量で、このような工程で製作してください』という指示が必要です。
この指示が規格というイメージです。
こうして規格を定めておけば、A工場とB工場のように製作場所が変わったとしても出来上がる製品は全く同じものになります。
ちなみに、長さを表すための「m:メートル」という単位や重さを表すための「kg:キログラム」という単位なんかも規格です。
ああして基準を定めているから”大体これぐらい”という想像を私達はできるのです。
次は法律についてです。
規格の説明をしたので何となく規格と法律では何が違うのか想像ができるのではないでしょうか?
規格は標準・基準を表すものでした。
規格は遵守した方が何かと良いですが、必ずしも規格に則る必要はありません。
あくまで任意です。
その点、法律は守らないと罰則があります。
ここが大きな違いです。
そんな規格と法律…つまり決まり事について調べてまとめたのが本記事となります。
内容はそこそこ知れる程度のレベルに抑えています。
専門的過ぎると情報過多で意味わからなくなるので。
2.UL規格とは?
ULとは、アメリカに本拠地を置く認証機関である[Underwriters Laboratories Inc.(アメリカ保険業者安全試験所)]の略称です。
この機関が定めた規格だからUL規格と呼ばれています。
UL規格は、電気製品の火災及び感電の危険性を排除することを目的としています。
ULは1893年にシカゴの博覧会で発生した火事をきっかけに火災保険業者がスポンサーとなって設立されました。
ULは非営利目的で組織されている民間企業ですが、積み重ねてきた実績からアメリカ国内では高く評価されています。
その為、アメリカ国内で販売している製品はUL規格認証を取得しているか否かで信頼度が大きく異なります。
というか、ほぼ必須条件化しています。
ULは米国国家認証試験機関NRTL[National Recognized Testing Laboratories]から認定を取る必要があります。
私のように初見でNTRに見えた方は疲れているのでしっかり休んでください。
アメリカ国内で支持を受けているという話をしましたが、他の国では通用しないというわけではありません。
日本でもUL規格に適合した製品は普通にあります。
特に、電線・ケーブルの選定をしたことがある人は見かけたことがあるのではないでしょうか?
電線・ケーブルに対しては、UL規格に則って難燃性試験を行っていることが多いです。
電線・ケーブルには、“UL XXXXX 準拠”といった表示がよくされています。
※ “X”に数字が割り振られる。
この数字はスタイルナンバーと呼ばれています。
このナンバーが1000番台だと単心、2000番台だと2心以上、3000番台だと特殊絶縁材料を使用という具合にナンバーには意味があります。
UL規格を満たすかどうかしっかりと検証された上で合格した製品をUL認定品、設計上はUL規格を満たすものの実際の認定を受けてはいない製品をUL準拠品と表現します。
もちろん前者の方が信頼度は高いので、要求される条件によっては前者でなければいけない場合もあるので注意が必要です。
3.UL規格の部門
UL規格は、電気製品の火災及び感電の危険性を排除することを目的としていると述べましたが、厳密には6つの部門に分類されています。
分類は以下の通りです。
①電気部門
②火災予防部門
③盗難防止・警報部門
④暖房・空調・冷却部門
⑤傷害・科学災害部門
⑥船舶部門
4.UL規格の認証の分類
UL規格の認証制度には3つの分類があります。
Listing認証(リスティング認証)とRecognition認証(レコグニション認証)とClassification認証(クラシフィケーション認証)いうものです。
どの認証を得ているかによって認証マークが異なります。
5.UL規格の認証の分類とULマーク
UL規格を満たしている場合、そのことを保証するためにULマークというものを製品に表示します。
その種類について書いていきたいのですが、その前にちょっと補足があります。
アメリカとカナダの間にはMRA[Mutual Recognition Agreement]相互認証制度が締結されていて、ULでCSA規格(カナダ規格)の認証を受けることが可能です。
こうすることで、UL(アメリカ)で認証を行ってもカナダ国内でCSA認証を受けたのと同等の扱いを受けることができます。
ULにてUL規格とCSA規格の両方の認証を受けることも可能です。
その為、ULでどの認証を受けたかによってマークの表示が微妙に変わります。
ULにてUL規格のみ認証を取った証明となるマークをULマーク、ULにてCSA規格のみ認証を取った証明となるマークをC-ULマーク、ULにてUL規格及びCSA規格の認証を取った証明となるマークをC-UL-USマークと呼びます。
c-ULマーク、c-UL-usマークと表示されている場合もあるので、小文字と大文字のどちらが正しいのかはよくわかっていません。
説明するにあたり実際にマークを載せたいところですが、ブログに載せても良いものか怪しいので各マークの特徴を記載しておきます。
UL規格の認証 (アメリカ向け) | CSA規格の認証 (カナダ向け) | UL+CSA規格の認証 (アメリカ+カナダ向け) | |
---|---|---|---|
Listing認証 | UL+LISTED | UL+LISTED+C | UL+LISTED+C+US |
Recognition認証 | URを左右反転 | URを左右反転+C | URを左右反転+C+US |
Classification認証 | UL+CLASSIFIED | UL+CLASSIFIED+C | UL+CLASSIFIED+C+US |
※ UL規格の認証のマークに対して、Cは左側、USは右側にくっつく見た目になります。
表を見てわかる通り、特徴はまんまです。
Canada向けのULマークになるから“C”が追加される、CanadaとUSA向けのULマークになるから“C”と“US”が追加されただけですね。
Recognition認証のマークだけちょっと覚えなければいけないですが、他は認証の名称から連想できます。
実際の製品に付いていてるマークなら載っていても問題無いと思うので、実例を一つだけ載せておきます。
ULを〇で囲ってあるヤツがそうです。
UL+LISTED+C+USになってますね。
以上、「UL規格」についてでした。