今回は、「E系列」についての説明です。
1.E系列とは?
抵抗の値はE系列という一見中途半端に感じる値に設定されています。
E系列には、E12系・E24系・E96系などの種類があり、仮にE12系列なら1~10の数字の範囲を10の12乗根で分割したものになります。
言い替えると、対数グラフ上で等間隔になるように分割した値になっています。
ここまでの説明はよく色々なサイトでされていますが、導き方や対数グラフ上で等間隔にする意味まで説明していることは少ないです。
今回は、その辺りを深堀りしていきたいと思います。
2.なぜキリの良い数字にしないのか?
まず初めに疑問に思うであろう内容、『なぜキリの良い数字にしないのか?』から説明していきます。
仮に、キッチリと1Ω・2Ω・3Ω…と抵抗を作ったとします。
このルールに則って1000Ωまで抵抗を作ると、1~1000Ωの間に1000個もの抵抗が存在することになります。
種類が多過ぎると思いませんか?
細かく分類されているから便利ではあるのですが、これらの抵抗を保管することを想像してください。
到底管理できないですよね?
キリの良い数字になっていない最たる理由はこれです。
では、抵抗値の刻み方をもう少し大雑把にしてみたらどうでしょうか?
試しに一番左の数字だけ+1していくルールに則った場合について考えてみます。
1Ω・2Ω・3Ω…9Ω・10Ω・20Ω・30Ω…という具合に変化していくわけです。
これなら抵抗の種類も絞られる上に、キリの良い数字で覚えやすいですよね。
なのですが、この場合別の問題が浮上してきます。
それは、抵抗値の増加率です。
9Ωの次に用意されている抵抗は10Ωなので、抵抗値は約1.1倍になります。
10Ωの次に用意されている抵抗は20Ωなので、抵抗値は2倍になります。
20Ωの次に用意されている抵抗は30Ωなので、抵抗値は1.5倍になります。
このように、抵抗値の増加率がバラバラになってしまいます。
その為、抵抗値を微調整したい時に丁度良い抵抗が存在するとは限らなくなり、不都合が生じます。
ここに抵抗値の誤差の補正も入ってくるので、キリの良い数字にすると実用的ではなくなってしまうのです。
ではどうすれば良いのかというと、その間を補えるような抵抗も用意するしかないですよね?
そこで登場するのがE系列というわけです。
3.E系列の正体は等比数列
キリの良い数字にすると必要な抵抗値を作ることができないことがわかりました。
その為、実用性を考えるなら、キリが良い/悪いに関わらず必要な抵抗値を作れるような並びにする必要があります。
要は、先程問題となった抵抗値の増加率が一定になるように出来れば良いのです。
そんな並びがE系列で、E12系列なら1~10の数字を10の12乗根で分割したものになるという説明に繋がります。
10の12乗根は12√10と書きます。
あまり見かけない形式なのでわかりづらいかもしれませんが、12√10という数字を12回かけると10になるというだけです。
例えば、元の数字が1だとすると、以下のように変化していきます。
1、12√10、(12√10)2、(12√10)3、(12√10)4、(12√10)5、(12√10)6、(12√10)7、(12√10)8、(12√10)9、(12√10)10、(12√10)11、(12√10)12=10
12回かけたら10倍になっているでしょう?
これが何を意味するかと言うと、隣り合う数字同士の倍率が12√10倍で一定になっているんです。
キリの良い数字だと抵抗値の増加率がバラバラになると先程述べましたが、このルールで抵抗値を設定してあげれば増加率が一定になるのです。
だからE系列で抵抗値を設定して、抵抗を組み合わせることで必要な抵抗値を作れるようにしているというわけです。
このような隣り合う2つの数字の比率が等しくなった並びのことを等比数列と呼びます。
ただ、12√10という数字ではどの程度かわからないづらいですよね。
なので、先程の1~10の並びを小数第二位を四捨五入した値に変換して並べてみると、以下のようになります。
1.0、1.2、1.5、1.8、2.2、2.7、3.3、3.9、4.7、5.6、6.8、8.2、10
なんか見覚えのある数字の並びになっているのではないでしょうか?
E12系列の場合、これらの数字の抵抗値が用意されていることになります。
いつも目にしているであろう抵抗値は、こうして設定されていたのです。
意味不明な並びに見えて、本質は結構単純だったのですよ。
4.E系列の実際の数値
E系列にはE48系列やE96系列なんてものも存在しますが、実際に使用する抵抗としては大体E24系列で事足ります。
なので、例としてE3系列・E6系列・E12系列・E24系列だと抵抗値がどんな具合に変化するのか記載しておきます。
それぞれ1~10の数字の範囲を10の3乗根、10の6乗根、10の12乗根、10の24乗根で分割してあるだけですけどね。
1.0 | |||||||
2.2 | |||||||
4.7 |
1.0 | 1.5 | ||||||
2.2 | 3.3 | ||||||
4.7 | 6.8 |
1.0 | 1.2 | 1.5 | 1.8 | ||||
2.2 | 2.7 | 3.3 | 3.9 | ||||
4.7 | 5.6 | 6.8 | 8.2 |
1.0 | 1.1 | 1.2 | 1.3 | 1.5 | 1.6 | 1.8 | 2.0 |
2.2 | 2.4 | 2.7 | 3.0 | 3.3 | 3.6 | 3.9 | 4.3 |
4.7 | 5.1 | 5.6 | 6.2 | 6.8 | 7.5 | 8.2 | 9.1 |
E24系列をベースとして穴あき状態になっていくだけですけどね。
5.E系列の種類ごとの許容誤差
E系列の仕組みはわかったので、次は許容誤差の話です。
E12系列とE24系列を例にして考えると、E24系列の方が細かく分割されていることはわかりますよね。
ということは、E24系列の方が抵抗値の許容誤差は小さくなります。
数字の刻み方が細かくなって抵抗の選べる幅が広がるので当然の話です。
その為、E系列の種類によって許容誤差は変化します。
実際の許容誤差は以下のようになっています。
- E3系列:許容誤差40%
- E6系列:許容誤差20%
- E12系列:許容誤差10%
- E24系列:許容誤差5%
- E48系列:許容誤差2%
- E96系列:許容誤差1%
以上、「E系列」についての説明でした。