今回は、「フォトトランジスタ」についての説明です。
1.フォトトランジスタとは?
フォトダイオードという光電効果を利用した光電変換素子・受光素子が存在します。
原理を簡単にまとめると、p型半導体とn型半導体のpn接合により発生する空乏層には電界がかかっていて、空乏層に光を照射すると光電効果により電子が発生し、発生した電子が電界によって移動して電流が流れるようになるというものです。
詳しくはフォトダイオードと光電効果の記事を読んでみてください。
このフォトダイオードと似たような動作をする部品としてフォトトランジスタというものがあります。
フォトトランジスタはフォトダイオードと同じく光を照射すると反応するいわゆる受光素子です。
ダイオードはpn接合なのに対してトランジスタはnpn/pnp接合になっています。
構造も似ているので、フォトトランジスタという名称からフォトダイオードと似たような動作原理をすると想像しそうなものですが、おそらく想像しているものと実物の構造は一致しません。
そこに関しては原理の説明で触れていきます。
2.フォトトランジスタの回路記号
回路記号は以下の通りです。
矢印が光の向きになっているので、光を照射されるフォトトランジスタの場合は図1のようになっているわけです。
LED(発光ダイオード)のような発光する側の場合、矢印の向きが逆になっています。
フォトトランジスタと言うと、図1のようにバイポーラトランジスタを用いた回路図になっています。
ユニポーラトランジスタ(FET)のものもあるのかは不明です。
普通に調べると出てくるのはバイポーラトランジスタのものなので、少なくとも一般的なのはバイポーラトランジスタを用いたフォトトランジスタなのでしょう。
ユニポーラトランジスタとバイポーラトランジスタの違いについても知りたい場合は以下の記事を参照してください。
3.フォトトランジスタの構造と原理
フォトトランジスタは、フォトダイオードとトランジスタを組み合わせて構成されています。
図1の等価回路がまさにそうなっていますね。
つまり、フォトダイオードに光を照射して光電効果によって流れる電流をトランジスタで増幅しているのがフォトトランジスタです。
なので、フォトダイオードのようにトランジスタに光を照射すると光電効果により電子が移動して電流が流れるという構造ではないのです。
最初に『おそらく想像しているものと実物の構造は一致しない』と言っていたのはこういうことです。
トランジスタも使用していますが、光で動作してるのはフォトダイオード部分だけですからね。
図1を見てわかる通り、フォトダイオードをベース-コレクタ間に接続しています。
こうすることでフォトダイオードに光が照射された時にのみベースに電流が流れ、増幅されたエミッタ電流が出力される仕組みになっています。
フォトダイオードの仕組みさえ理解していればフォトトランジスタの原理は結構単純なのです。
普通のpn接合ダイオードはアノードからカソード、フォトダイオードはカソードからアノードに電流が流れるという点は勘違いしないように注意しましょう。
4.フォトダイオードとフォトトランジスタの特徴の比較
フォトトランジスタはトランジスタの増幅機能を利用しているので、微弱な信号でも検出することが可能です。
なので、感度は良好なのですが、その分応答性が悪いです。
フォトトランジスタの特徴はこんな感じですが、同じような素子であるフォトダイオードとはどんな違いがあるのでしょうか?
ということで、簡単にまとめてみました。
フォトダイオードとフォトトランジスタの特徴を比較すると、以下のようになります。
※ フォトダイオードは基本的なPN型とします。
フォトダイオード | フォトトランジスタ | |
---|---|---|
応答速度 | 速い | 遅い |
直線性 | 良い | 悪い |
光電流量 | 少ない | 多い |
環境温度変化の影響 | 小さい | 大きい |
見てわかる通り、トランジスタの特徴である増幅機能を遺憾なく発揮した「光によって発生する電流量が多くなる」という点が一番の特徴と言えるようです。
ただ、他の性能は軒並みフォトダイオードの方が勝るので、求めている性能に近いものを選定する必要があります。
構成もフォトダイオード単体の方が単純ですしね。
以上、「フォトトランジスタ」についての説明でした。