今回は、「ダイオードの種類と用途」についての説明です。
目次
1.初めに
ただ単にダイオードと言っても、種類は多々あります。
同じダイオードという名称でも種類が異なると使用方法が全く異なるということはザラです。
なので、今回はダイオードにはどんな種類があるのかを簡単にまとめてみました。
全部ではありませんが、詳細に関しては個別にまとめていくつもりです。
2.ダイオードの種類と用途
2-1.整流ダイオード
一般的なpn接合ダイオード。
シリコンダイオードはここに含まれる。
電流を一方向にしか流さない。
整流ダイオードに電流が流れると、ダイオードの両端の電位差=順方向電圧になる。
安価で大きな電圧・電流にも耐えられるので、電源回路・整流回路・スイッチング用途と色々な場面で使用されている。
使用周波数は1kHz程度を想定している。
量記号はD。
2-2.スイッチングダイオード
名称通り、スイッチングの機能に特化させたダイオード。
一般的なダイオード(整流ダイオード)と比較して逆回復時間(ダイオードが完全にON/OFFになるまでかかる時間)が短いので、ON/OFFの切り替えが他のダイオードに比べてスムーズ。
回路記号は整流ダイオードと変わらない。
2-3.ファストリカバリダイオード/FRD
スイッチングダイオード同様に、一般的なダイオード(整流ダイオード)と比較して逆回復時間が短いダイオード。
逆回復時間に焦点を当てて[fast recovery(回復が速い)]と言っているダイオードということです。
FRD[Fast Recovery Diode]と省略されていたり、高速整流ダイオードと呼ばれていたりします。
順方向電圧は大きめになっている。
使用周波数は数十kHz~数百kHz程度を想定している。
n型半導体に不純物を混ぜることで上記の特性を実現している。
電源回路やスイッチング用途で使用します。
回路記号は整流ダイオードと変わらない。
2-4.ツェナーダイオード
低電圧を得る・サージを吸収する用途で使用されるダイオード。
定電圧ダイオードとも呼ばれる。
ダイオードに対して負方向に電圧を上げていくと、ある点から急激に電流が流れるという特性を利用している。
つまり、逆方向に接続して使用します。
ツェナーダイオードを使用することで回路にある値以上の電圧がかからないようにできるので、過電圧保護回路などに使用される。
回路記号は普通のダイオードにツェナー[zener]の頭文字の“Z”が付いたような見た目をしています。
【詳細】
2-5.発光ダイオード/LED
順方向電圧を印加すると発光するダイオード。
通称LED[Light Emitting Diode(光を放っているダイオード)]。
使用する半導体の種類によって光の色が変化したり、電流の大きさによって光の強さが変化します。
ディスプレイのバックライトや照明として使用されています。
回路記号を見ると、光の向きが矢印で表記されています。
後述のフォトダイオードと矢印の方向が反転していますね。
【詳細】
2-6.フォトダイオード
光を照射すると逆方向に電流が流せるようになるダイオード。
順方向ではなく逆方向に電流が流れるようになる点に注意が必要。
何かしらの受光部に使用されています。
太陽光パネルをイメージしてもらえば良いかと。
回路記号を見ると、光の向きが矢印で表記されています。
前述の発光ダイオードと矢印の方向が反転していますね。
【詳細】
2-7.ショットキーバリアダイオード
pn接合ではなく、金属とn型半導体を接合したダイオード。
一般的なpn接合ダイオードと比べて順方向電圧が非常に小さく、正孔をキャリアとして使用しないので高速動作に対応しています。
代わりに逆方向電流が大きくなるというデメリットがあります。
スイッチング用途か、順方向電圧を抑えたい場合に使用します。
回路記号は普通のダイオードにショットキー[schottky]の頭文字の“S”が付いたような見た目をしています。
【詳細】
2-8.可変容量ダイオード/バリキャップ
その名の通り容量(静電容量)を変化させることを目的としたダイオード。
可変容量ダイオード[variable capacitance diode]なので、バリキャップやバラクタ(バリアブルリアクタ)とも呼ばれます。
ダイオードに逆方向電圧を印加した際に空乏層が発生しますが、実はこの空乏層は静電容量を持っています。
可変容量ダイオードの場合、逆方向電圧を小さくすると容量が大きくなり、逆方向電圧を大きくすると容量が小さくなるようになっています。
要するに、静電容量を変化させることができる一種のコンデンサとして使用できるわけです。
普通のダイオードも容量は変化するのですが、可変容量ダイオードの場合は意図的にその変化が大きくなるように設計されています。
逆に、他のダイオードは容量があまり変化しないように設計されています。
回路記号は、ダイオードとコンデンサが合体したような見た目をしています。
TVやラジオなどの通信機器などに使用されています。
2-9.定電流ダイオード/CRD
その名の通り定電流を供給できるダイオード。
CRD[Current Regulative Diode]という略称で呼ばれていることがあります。
順方向領域に電圧が変動しても電流値が変化しない領域が存在するので、その領域内で使用することで定電流を作り出しています。
この時の定電流のことをピンチオフ電流と言います。
ある点を境に電流が一気に流れるようになるので、その電圧値は超えないように注意しましょう。
壊れます。
定電流回路をまともに組もうとすると結構複雑なのですが、定電流ダイオードがあればこれ一つで簡単に定電流を作り出すことが可能です。
その手軽さから、LEDに小さな定電流を供給するためにセットで使用されていることが多いです。
定電流ダイオードの見た目は普通のダイオードと同じで、アノードからカソード方向に電流が流れるという点も同様です。
ですが、内部構造が大きく異なります。
簡単に言うと、ダイオードというよりFETっぽくなっています。
回路記号はダイオードの面影は無くなっています。
一応カソード方向に縦線があるという部分は共通ですが…。
○の中に矢印を描き入れて定電流源のような見た目にしている場合もあるので、イメージとしてはそれで覚えた方が定着するかもしれませんね。
ちなみに、あくまで流れる電流を制限することで定電流を作り出しているので、10mAしか流せない回路に定電流ダイオードを組み込んでも10mA以上は作り出せませんからね?
2-10.TVSダイオード
サージ吸収用のダイオード。
[Transient Voltage Suppressor Diode]の略称です。
ESD保護用ダイオードとも呼ばれます。
ツェナーダイオードの一種という括りになります。
具体的にツェナーダイオードと何が違うのかと言うと、通常時の状態に違いがあります。
ツェナーダイオードは常にONになっています。
それに対して、TVSダイオードは基本はOFFになっていて、サージが入ってきた瞬間にのみONになるようになっています。
通常状態は電流が流れない領域で使用するのです。
これはどういう事かと言うと、ツェナーダイオードは定電圧を作り出す用途に使用して、TVSダイオードはサージ吸収用に使用しているんです。
つまり、ツェナーダイオードは定電圧を得る・サージを吸収する用途で使用されると言われていますが、半分はTVSダイオードを指しているんですね。
TVSダイオードはツェナーダイオードの一種だと述べたのはこういうことです。
また、流せる電流量も大きく異なります。
ツェナーダイオードに流れる電流は数mA~十数mA程度です。
それに対して、TVSダイオードはサージ電圧が印加されてくると考えられる端子の直下に組み込まれます。
つまり、システム全体の保護をします。
なので、数A~十数Aという大電流が流れても大丈夫なようになっています。
TVSダイオードには単方向と双方向の二種類が存在し、回路記号は以下のようになっています。
単方向は逆方向接続した際に正のサージ電圧を吸収します。
双方向は、正のサージ電圧も負のサージ電圧も両方共吸収できるわけです。
以上、「ダイオードの種類と用途」についての説明でした。