今回は、「脂質」についての説明です。
1.脂質の基本
炭水化物・たんぱく質・脂質は三大栄養素と呼ばれ、生きていく上で特に重要な栄養素です。
脂質は「脂」なので体に悪い・太るというイメージを持つ方が多いと思いますが、三大栄養素に含まれるだけあって普通に重要な栄養素です。
脂質は、優先的に身体に蓄えられて、必要に応じて分解されてエネルギー源として使用されます。
また、脂溶性のビタミン(A,D,E,K)の吸収を促進させたり、細胞膜・脳細胞・ホルモンなどの材料になります。
細胞を構成してるんですよ、脂質って。
つまり、悪いイメージを持っているのはただ単に摂り過ぎなだけなんですよね。
脂質は身体に蓄えられるので、エネルギー源として使用されなければそのまま脂肪としてあなた達のお腹回りにストックされます。
それだけの話です。
脂質は分解されてエネルギー源として使用されるので、生命維持・身体活動に必要なエネルギーと密接な関係があります。
エネルギーは炭水化物・たんぱく質・脂質の三大栄養素からおおよその値が算出可能で、各成分は1g当たりの利用エネルギー量(エネルギー換算係数と言い、1[g]当たり何[kcal]に相当するかを定めてある)が決まっていて、以下のように表せます。
エネルギー[kcal]≒炭水化物[g]×4+たんぱく質[g]×4+脂質[g]×9
この式を見てわかる通り、脂質は圧倒的にエネルギー変換率が高いです。
つまり、脂質が多い=カロリーが高い、です。
脂肪の種類は、脂肪酸(飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸)・中性脂肪・ステロール類など色々あります。
そんなんものいちいち覚えてられないと思うので、要点をまとめました。
必須脂肪酸は、n-6系脂肪酸(オメガ6脂肪酸)とn-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)と呼ばれる物質です。
必須脂肪酸に関してはまた後で詳しく説明していきます。
2.飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
脂肪の主要な構成要素の1つに脂肪酸と言う物質があります。
脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸という2種類に分類できます。
こうやって書くと不飽和脂肪酸は体に良いんだと感じますが、例外があります。
3.不飽和脂肪酸の詳細
不飽和脂肪酸について詳しく解説していきます。
不飽和脂肪酸の分類を詳しく書くと以下のようになります。
不飽和脂肪酸は適量ならば概ね体に良いのですが、トランス型脂肪酸という曲者が混ざっています。
シス型脂肪酸とトランス型脂肪酸の違いは、水素と炭素の結合構造の違いです。
シス(cis)は同じ側に位置すること、トランス(trans)は横切ることを意味します。
なので、炭素の二重結合を挟んで水素がどこに結合しているかで分類されています。
トランス脂肪酸は、天然の食品にはほとんど含まれていません。
反芻をする動物の食肉は微量のトランス脂肪酸を含むようです。
では、トランス脂肪酸を多く含む食品はどんなものなのでしょうか?
答えは、工業的に加工して作られたものです。
マーガリン、ファットスプレットなどが該当します。
トランス脂肪酸は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増やし、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を減らす作用があり、動脈硬化などの心疾患を引き起こすリスクが高まると言われています。
少なくとも、特に摂取する必要性の無い脂肪酸であることは確かです。
ここで不飽和脂肪酸の分類をもう一度確認して欲しいのですが、トランス脂肪酸はn-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸の中にも含まれています。
なので、必須脂肪酸であるn-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸の一部にトランス脂肪酸というあまり体に良いわけではない脂肪酸も含まれている可能性があるということは頭の片隅に置いておくと良いかもしれません。
次に、大分類であるn-9系脂肪酸、n-6系脂肪酸、n-3系脂肪酸について説明していきます。
・n-9系脂肪酸
一価不飽和脂肪酸であるn-9系脂肪酸は、代表的なものにオレイン酸などがあります。
一価不飽和脂肪酸なので、必須脂肪酸のように食品から摂取しなくても体内で合成できます。
HDLコレステロール(善玉コレステロール)に影響を与えずにLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を減らす作用があると言われています。
n-9系脂肪酸を多く含む食品には以下のようなものがあります。
- ごま油
- 紅花油
- 菜種油
- オリーブオイル
- アボカド
日清の「キャノーラ油」なんかは菜種油です。
・n-6系脂肪酸
多価不飽和脂肪酸であるn-6系脂肪酸は、代表的なものにリノール酸などがあります。
多価不飽和脂肪酸なので、必須脂肪酸です。
意識して摂取するようにしましょう。
血中のコレステロール濃度を下げる作用があると言われています。
n-6系脂肪酸を多く含む食品には以下のようなものがあります。
- ごま油
- コーン油
- 大豆油
- レバー
- 卵黄
・n-3系脂肪酸
多価不飽和脂肪酸であるn-3系脂肪酸は、代表的なものにα-リノレン酸などがあります。
多価不飽和脂肪酸なので、必須脂肪酸です。
意識して摂取するようにしましょう。
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)をHDLコレステロール(善玉コレステロール)に変換する作用があると言われています。
他にも、アレルギー原因物質の抑制や血圧を下げる効果もあり、生活習慣病予防に向いています。
n-3系脂肪酸を多く含む食品には以下のようなものがあります。
- しそ油
- くるみ
- 魚介類(特に青魚)
α-リノレン酸は体内でEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)に変換されます。
EPAとDHAを体内で合成するにはα-リノレン酸を摂取するほかないので、EPAとDHAも必須脂肪酸という扱いになります。
EPAとDHAの効能は色々ありますが、EPAは細胞膜、DHAは脳細胞に関与する重要な栄養素で、体に良いという程度は覚えておきましょう。
不飽和脂肪酸の説明は以上となります。
不飽和脂肪酸は大体体に良いと理解できたと思いますが、あくまで適量なら体に良いです。
摂り過ぎには注意しましょう。
4.コレステロールって何?
日常生活でコレステロールという単語はよく聞くかと思います。
HDLコレステロールとLDLコレステロールは健康診断結果に載ってたりしますしね。
ここまでの説明でもHDLコレステロール(善玉コレステロール)、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)がしれっと登場していますが、そもそもコレステロールとは何なのかよくわかっていない人は多いのではないでしょうか?
なので、ここで説明しておこうと思います。
この記事の序盤の記述に以下のような一文があります。
『脂肪の種類は、脂肪酸(飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸)・中性脂肪・ステロール類など色々あります。』
ここで言うステロール類にコレステロールは含まれています。
つまり、前提としてコレステロールは脂質の一種です。
ここまでの記述で、脂質は一般的に良いイメージを持たれていないものの、良いモノも悪いモノもあるということを説明してきました。
コレステロールは良い働きをするもので、細胞膜・ホルモン・胆汁(脂肪の消化吸収を促す)など人体を形成する為に必要な物質です。
コレステロールは肝臓で作られ、血液によって全身に送り届けられます。
ただ、コレステロールは“脂”なので水分の多い血液にうまく溶け込むことができません。
そこで、コレステロールをリボたんぱく質という成分で覆うことで血液に溶け込ませて運搬するという措置を取っています。
このリボたんぱく質で覆われた状態のコレステロールがHDLコレステロールとLDLコレステロールです。
厳密には、覆うのに使っているリボたんぱく質、つまり入れ物部分のことです。
HDL…High Density Lipoprotein:高比重リポタンパク質
LDL…Low Density Lipoprotein:低比重リポタンパク質
なので、HDLコレステロールもLDLコレステロールも中身は同じコレステロールです。
では何が違うのかというと、役割が違います。
役割の違いは以下の通りです。
HDLコレステロール(善玉コレステロール)
⇒余分なコレステロールを回収して肝臓に戻ってくる。
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
⇒肝臓から出発してコレステロールを運び、全身に置いてくる。
HDLコレステロールが少な過ぎるもしくはLDLコレステロールが多過ぎると、血液中のコレステロール値が上昇し、動脈硬化を引き起こす要因になります。
このイメージのせいでLDLコレステロールは悪玉と呼ばれてしまっています。
コレステロールを全身に運ぶこと自体は必要なことなので、寧ろ善い存在です。
何事も過剰はダメというだけです。
血液検査でHDLコレステロールとLDLコレステロールが正常値か調べることが可能です。
HDLコレステロールが40ml/dl以上、LDLコレステロールが140mg/dl以下で正常です。
健康診断で異常値一歩手前だった場合は気を付けてください。
対処法ですが、HDLコレステロールが少ない場合は有酸素運動をして、LDLコレステロールが多い場合は飽和脂肪酸の摂り過ぎが1つの要因なので飽和脂肪酸(肉やバターなどに含まれる)の摂取量を減らしましょう。
また、1日3食を心掛け、アルコールは適量に、煙草は吸わないようにしましょう。
結局のところ、世間一般で言う健康的な生活をしろというだけです。
5.1日当たりの脂質必要量
では、実際に1日当たり何[g]程度必要なのかについて考えていきます。
脂質は、エネルギー源として使用される主要な栄養素です。
その為、同様にエネルギー源として使用される炭水化物やたんぱく質の摂取量を考慮して設定していく必要があります。
なので、脂質の場合は1日当たり何[g]必要かではなく、1日に必要な総エネルギー量に対する比率が定められています。
男性女性に関わらず、総エネルギー量の20~30%を脂質から補うのが理想です。
※ 0~11ヶ月の子供のみ40~50%程度。
1日に必要なエネルギー量は別の記事にまとめてあるので、そこから逆算してください。
大まかな目標量(健康の為に最低限摂っておいて欲しい量)は、男性は75g、女性は55gです。
※ 18~49歳で健康な人を対象に、総エネルギー量の25%で計算した切りをよくした数値です。
【1日に必要な総エネルギー量】÷9×【比率(0.2~0.3)】で計算できます。
また、脂質全体とは違い必須脂肪酸は1日当たり何[g]必要かは定められています。
正直、そこを知っていても具体的にどんの食品にどの程度の必須脂肪酸が含まれているのかがわからないので、この記事には載せてません。
気になる方は厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」を参照して下さい。
以上、「脂質」についての説明でした。