今回は、「相互インダクタンス」についての説明です。
1.ポイント
2.相互インダクタンスとは?
図1のように2つのコイルが隣り合っていて、コイル1に電流が流れています。
コイル1に流れる電流I1[A]を変化させるとコイル2と鎖交する磁束Φ1[Wb]が変化し、コイル2に起電力e2[V]が誘起されます。
また、図2のように2つのコイルが隣り合っていて、コイル2に電流が流れています。
コイル2に流れる電流I2[A]を変化させるとコイル1と鎖交する磁束Φ2[Wb]が変化し、コイル1に起電力e1[V]が誘起されます。
このように、片方のコイルの電流を変化させるともう片方のコイルに起電力が誘起されるという関係が相互に成り立っています。
この作用のことを相互誘導作用と呼びます。
この関係が成り立っているコイルのことを電磁結合していると言い、この回路のことを結合回路と言います。
コイル同士が相互に電磁誘導している作用ということですね。
例えば、図1のようにコイル1に電源を印加することで電流I1を流しているとして、電源を切ると電流I1は減少し、磁束Φ1も減少します。
その際、電流I1の減少を妨げる向きにコイル2が相互誘電起電力を誘起します。
つまり、減少した磁束Φ1を補填する向き(図1の磁束Φ1と同じ向き)に起電力を誘起します。
コイルに流れる電流がΔt[s]の間にΔI1、ΔI2[A]だけ変化したとします。
Δtは電流変化時の経過時間、ΔI1はコイル1の電流の変化量、ΔI2はコイル2の電流の変化量を表しています。
相互誘導作用により誘起される誘導起電力は、他方のコイルの電流の変化量に比例します。
その為、図1と図2におけるコイル1の誘導起電力e1[V]とコイル2の誘導起電力e2[V]を式で表すと以下のようになります。
Mは相互誘導作用時のコイルの性質を表す比例定数で、相互インダクタンスと言います。
単位は[H]です。
電流の減少を妨げる向きにコイルが相互誘電起電力を誘起する為、符号は-(マイナス)になります。
相互インダクタンスの基本的な考え方は、自己誘導するか相互誘導するかの違いはありますが自己インダクタンスと同じです。
自己インダクタンスは磁束鎖交数NΦをコイルに流れる電流Iで割った値でした。
同様に、相互インダクタンスも磁束鎖交数をコイルに流れる電流で割った値になりますが、どちらのコイルの巻数・磁束・電流なのかに注意する必要があります。
相互インダクタンスを式で表すと以下のようになります。
このように、コイル1とコイル2の巻数・磁束・電流が入り混じった形になります。
相互誘導作用がどうやって引き起こされているかを意識して、式の形と紐づけて覚えましょう。
コイル1に流れる電流I1[A]を変化させるとコイル2と鎖交する磁束Φ1[Wb]が変化し、巻数N2[回]のコイル2に起電力e2[V]が誘起されます。⇒N2Φ1/I1
(コイル1に電流を流した時のコイル2の磁束鎖交数)
コイル2に流れる電流I2[A]を変化させるとコイル1と鎖交する磁束Φ2[Wb]が変化し、巻数N1[回]のコイル1に起電力e1[V]が誘起されます。⇒N1Φ2/I2
(コイル2に電流を流した時のコイル1の磁束鎖交数)
以上の関係から、I1=1[A]の時はコイル2の磁束鎖交数N2Φ1、I2=1[A]の時はコイル1の磁束鎖交数N1Φ2が相互インダクタンスMになることがわかります。
以上、「相互インダクタンス」についての説明でした。