今回は、「ビタミンA」についての説明です。
1.脂溶性ビタミンと水溶性ビタミン
ビタミンには、脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンがあります。
名称通り、油に溶けるか水に溶けるかという違いです。
ただ、その違いが大きな差なんですけどね。
水溶性ビタミンは水に溶けるので、過剰摂取したとしても尿として体外に排出されます。
それは明確なメリットではあるのですが、調理段階で水に溶けだして満足に摂取できなくなる可能性があります。
脂溶性ビタミンは水に溶けないので、過剰摂取すると体外に排出する術がありません。
逆に、脂肪に溶けるので、脂肪組織や肝臓に貯蔵され、体内で少しずつ消費されていきます。
その為、過剰摂取すると消費しきれなくなって逆に悪影響を与えてくる危険性があります。
なので、脂溶性ビタミンの場合は1日当たりの摂取量に上限が設けられていることがあります。
ビタミンAは、脂溶性ビタミンに分類されます。
2.ビタミンAの基本
ビタミンは体に良いとは言うものの、どう良いのかは正直よくわかっていないという人が多いのではないでしょうか?
私もビタミンCとビタミンD以外よくわかっていませんでした。
なので、たまに見て思い出せるようにこうしてまとめておこうとしているわけです。
ビタミンAの効能は、簡単にまとめると以下のようなものがあると言われています。
- 目や皮膚の粘膜を健康に保ったり、抵抗力を強める。
- 薄暗いところでの視力を保つ。
- 皮膚の乾燥・肥厚・角質を防止する。
- 上皮細胞で発癌物質の効果を軽減する。
眼・皮膚・粘膜を健康に保つというイメージで良さそうですね。
摂取量が足りな過ぎると最悪失明や夜盲症発生などのリスクがあります。
※ 夜盲症…文字通り夜になると前が全く見えなくなってしまう。
ビタミンAはレチノール・レチナール・レチノイン酸の総称です。
なのですが、β-カロテンなどもビタミンAの仲間だったりします。
β-カロテンは、体内に取り込むとプロビタミンAというビタミンAと同等のはたらきをする物質に変換されます。
このように、プロビタミンAに変換される化合物は50種類にも及びます。
一般的に聞きなれているのはβ-カロテンくらいですし、プロビタミンAへの変換効率が良いのもβ-カロテンなので、基本的に気にするのはβ-カロテンだけで良さそうですけどね。
レチノール・レチナール・レチノイン酸は動物性食品に多く含まれていて、プロビタミンAに成り得る化合物は植物性食品に多く含まれています。
では、動物性食品と植物性食品で何が違ってくるのかと言うと、後述する耐用上限量の有無に関わってきます。
端的に言うと、動物性食品は普通に過剰摂取になり、植物性食品を過剰に摂取したとしても必要な量だけプロビタミンAに変換されると言われています。
ただし、カロテノイド(動植物が持つ自然界に存在する黄色や赤色の色素のこと)を過剰摂取すると指先などが黄色くなる柑皮症になり兼ねませんので、結局植物性食品なら過剰摂取しても良いとは言い切れないんですけどね。
※ 柑皮症はカロテノイドの過剰摂取を止めれば自然治癒します。
ビタミンAが足りなくて影響が出るくらいならちょっと摂り過ぎるくらいがちょうど良いのかもしれません。
注意点が一つありまして、ビタミンAは吸収されて体内を移動する際にたんぱく質とくっつきます。
その為、たんぱく質もしっかり摂っておかないと、せっかく摂取したビタミンAが無駄になってしまいます。
それを言うなら炭水化物も脂質も一定量は必要なので、結局は『バランスの取れた食事を心掛けましょう』という話になるんですよね。
3.ビタミンAを摂り過ぎるとどうなる?
最初に述べたように、ビタミンAは脂溶性ビタミンなので過剰摂取は体に悪いです。
起こり得る健康障害は以下のようなものがあります。
- 頭痛
- 筋肉痛
- 皮膚のはげ落ち
- 脱毛症
- 食欲不振
摂り過ぎで逆に皮膚を健康に保てなくなるのは皮肉ですね。
ただ、普通に生活を送っているならビタミンAの過剰摂取に陥ることはほぼ無いようです。
過剰摂取になった場合、
サプリメントかレバーの摂り過ぎです。
サプリメントは補うためのものであって、多く摂れば良いというわけではないのです。
4.1日当たりのビタミンAの摂取量
ビタミンAの場合、推定平均必要量・推奨量・目安量・耐用上限量という区分があります。
《区分のふわっとしたイメージ》
推定平均必要量:最低限これくらい摂って欲しいけど足りないかも。
推奨量:これくらい摂っておいてね。
目安量:目安としてこのくらい摂っておけば不足することはないよ。
耐用上限量:摂り過ぎぃ。
※ 単位は[㎍RAE/日]です。
ビタミンAは肝臓に貯えられていて、ビタミンAの摂取が不足していてたとしても肝臓から供給されます。
この供給があるラインを下回るまで血液中のビタミンA濃度は変わらないので、このラインを維持できるかどうかで最低限の摂取量などを定めているようです。
《男性の場合》
年齢 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐用上限量 |
---|---|---|---|---|
0~5ヶ月 | - | - | 300 | 600 |
6~11ヶ月 | - | - | 400 | 600 |
1~2歳 | 300 | 400 | - | 600 |
3~5歳 | 350 | 450 | - | 700 |
6~7歳 | 300 | 400 | - | 950 |
8~9歳 | 350 | 500 | - | 1,200 |
10~11歳 | 450 | 600 | - | 1,500 |
12~14歳 | 550 | 800 | - | 2,100 |
15~17歳 | 650 | 900 | - | 2,500 |
18~29歳 | 600 | 850 | - | 2,700 |
30~49歳 | 650 | 900 | - | 2,700 |
50~64歳 | 650 | 900 | - | 2,700 |
65~74歳 | 600 | 850 | - | 2,700 |
75歳以上 | 550 | 800 | - | 2,700 |
《女性の場合》
年齢 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐用上限量 |
---|---|---|---|---|
0~5ヶ月 | - | - | 300 | 600 |
6~11ヶ月 | - | - | 400 | 600 |
1~2歳 | 250 | 350 | - | 600 |
3~5歳 | 350 | 500 | - | 850 |
6~7歳 | 300 | 400 | - | 1,200 |
8~9歳 | 350 | 500 | - | 1,500 |
10~11歳 | 400 | 600 | - | 1,900 |
12~14歳 | 500 | 700 | - | 2,500 |
15~17歳 | 500 | 650 | - | 2,800 |
18~29歳 | 450 | 650 | - | 2,700 |
30~49歳 | 500 | 700 | - | 2,700 |
50~64歳 | 500 | 700 | - | 2,700 |
65~74歳 | 500 | 700 | - | 2,700 |
75歳以上 | 450 | 650 | - | 2,700 |
妊婦さん及び授乳婦は上表の値にプラス補正が付きます。
子供の為にもいっぱい栄養を採ってあげて下さい。
妊婦 初期:+0
妊婦 中期:+0
妊婦 後期:+60(推定平均必要量)、80(推奨量)
授乳婦:+300(推定平均必要量)、450(推奨量)
5.ビタミンAを多く含む食品
ここまでの内容から、どの程度ビタミンAを摂取すれば良いかはわかったと思います。
なので、ビタミンAを多く含む食品について少し考えてみましょう。
過剰摂取の話に出てきた通り、とにかくレバーがヤバいです。
正直『頭おかしいんじゃないの?』と思うレベルで含有されています。
ビタミンA(プロビタミンAに変換されるものも含む)は以下のような食品に多く含まれていると言われています。
《動物性》
- レバー
- 魚介類(うなぎの蒲焼、ホタルイカなど)
- 卵
- 乳製品(バター、牛乳など)
《植物性》
- 緑黄色野菜(にんじん、ほうれん草など)
- 藻類(海苔、わかめなど)
- しそ
- モロヘイヤ
- 大葉
なんだかんだでブロッコリー・トマト・かぼちゃなどの野菜にもそこそこ含まれているので、日常的に野菜を食べていれば不足するということは無さそうですね。
…しそ・モロヘイヤ・大葉も緑黄色野菜でいいのかな?
※ 緑黄色野菜…原則として可食部100g中に600μg以上のβ-カロテンが含まれている野菜のこと。
肝心の量については詳しくは載せません。
というのも、よく100g当たり〇〇μgといったデータの羅列を目にしますが、調理方法・廃棄部位・個体差でいくらでも変動する為、詳しく考えるだけ無駄なんですよね。
そもそも何gとか管理できませんし。
ついでに言うと、載っている媒体によって値が違い過ぎててどれが正しいのやら…。
なので、例としてレバーとうなぎの蒲焼のレチノール含有量だけ書いておきますね。
コイツらはどこの情報でも大体同じでしたので。
レチノール含有量 | |
豚レバー(生)/鶏レバー(生) | 100g当たり10,000μg over |
うなぎの蒲焼 | 100g当たり1,500μg |
ね?レバーヤバいでしょ??
一日過剰に取ったところでなんてことはないので、たまに焼き鳥のレバー食べたり、レバニラ食べるくらいは何ともありません。
そこは勘違いしないでくださいね??
以上、「ビタミンA」についての説明でした。